第1676回:院長ブログ:睡眠不足は太る原因?睡眠と肥満・食欲の深い関係 ~食事と運動だけではない「第3の体重管理」~
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肥満対策というと、多くの方がまず考えるのは、
「食事を減らす」
「運動を増やす」
の2つではないでしょうか。
もちろん、どちらも非常に重要です。
しかし、もう一つ見落とされやすい生活習慣があります。
それが、
睡眠
です。
近年の研究では、短い睡眠時間や睡眠の質の低下が肥満や代謝異常と関連することが数多く報告されています。
つまり体重管理では、
食事+運動+睡眠
の3つをセットで考えることが大切です。
睡眠不足になると、翌日の生活にはさまざまな変化が起こります。
たとえば、
食欲が強くなる
高カロリーの食品を選びやすくなる
間食が増える
夜遅く食べる機会が増える
疲れて体を動かさなくなる
などです。
つまり睡眠不足は、
「食べる側」と「消費する側」の両方
に影響する可能性があります。
単純に、
「寝ている時間が短いから太る」
という話ではありません。
私たちの食欲は、単なる意志だけで決まっているわけではありません。
脳や消化管、脂肪組織などからのさまざまなシグナルによって調節されています。
睡眠不足になると、食欲調節に関係するホルモンや脳の反応が変化し、食べ物に対する欲求が強くなることがあります。
特に、
甘いもの
脂肪の多い食品
高エネルギーの食品
などを欲しくなりやすいことが研究で示されています。
「寝不足の日ほど、なぜか甘いものが食べたくなる」
という経験には、生理学的な背景がある可能性があるのです。
睡眠時間が短い人は、単純に起きている時間が長いという面もあります。
夜11時に寝る人と、午前2時まで起きている人を比べれば、後者には3時間余分な「食べる機会」があります。
その時間に、
お菓子
アイス
カップ麺
アルコール
おつまみ
などを摂れば、一日の摂取エネルギーは増えやすくなります。
特に、
夕食後の「もう一食」
が習慣になっている場合には注意が必要です。

【図1:睡眠不足で太りやすくなる5つの理由 ― 食欲・間食・夜食・活動量・代謝】
睡眠不足の翌日に、
「今日は疲れたから運動はやめよう」
と思った経験はないでしょうか。
睡眠不足は眠気や疲労感につながり、日常の身体活動量を減らす可能性があります。
ジムやウォーキングを中止するだけではありません。
階段を避ける
外出しなくなる
座っている時間が長くなる
など、無意識の活動量まで減ることがあります。
つまり、
睡眠不足
↓
疲れる
↓
動かない
↓
消費エネルギーが減る
という流れも考えられます。
睡眠は食欲だけではなく、糖代謝にも関係しています。
実験的に睡眠時間を制限すると、インスリン感受性が低下することが示されています。
つまり、睡眠不足が続くと、
インスリンが効きにくくなる方向
へ体が変化する可能性があります。
前回まで解説してきたインスリン抵抗性は、
肥満
内臓脂肪
2型糖尿病
メタボリックシンドローム
を理解するうえで重要な仕組みです。
睡眠は単なる「休息」ではなく、代謝を整える時間でもあると考えるとわかりやすいでしょう。
平日は睡眠不足でも、
「土日にたくさん寝れば大丈夫」
と思う方もいるでしょう。
休日に睡眠時間を確保することで眠気が改善することはありますが、慢性的な睡眠不足を休日だけですべて帳消しにできるとは限りません。
また、
平日:午前0時就寝・6時起床
休日:午前3時就寝・11時起床
のように大きく生活時間がずれると、体内時計も乱れやすくなります。
大切なのは、
平日を含めて、できるだけ安定した睡眠時間と生活リズムを確保すること
です。
必要な睡眠時間には個人差があります。
そのため、
「全員が必ず○時間眠ればよい」
と一律に考えるのは適切ではありません。
成人では一般に一定の睡眠時間を確保することが推奨されていますが、数字だけではなく、
日中に強い眠気がないか
朝すっきり起きられるか
休日に極端な寝だめが必要になっていないか
といった点も重要です。
「何時間寝たか」だけでなく、睡眠の質と日中の状態も見てください。
肥満との関係で特に重要なのが、
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
です。
肥満、とくに首まわりなどへの脂肪蓄積は、睡眠中の上気道を狭くし、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の重要なリスク因子になります。
すると、
肥満
↓
睡眠時無呼吸
↓
睡眠の質が低下
↓
日中の眠気・活動量低下
↓
体重管理が難しくなる
という悪循環につながることがあります。
ただし、睡眠時無呼吸症候群は痩せている人にも起こります。
顎や気道の形態なども関係するため、
「太っていないから睡眠時無呼吸ではない」
とは言い切れません。
【図2:肥満と睡眠時無呼吸症候群の悪循環 ― いびき・無呼吸・眠気・活動量低下】
次のような症状がある場合には注意してください。
特に、
肥満+いびき+日中の眠気
がある場合には、睡眠時無呼吸症候群の可能性を考える必要があります。
肥満が関係している閉塞性睡眠時無呼吸症候群では、減量によって症状や重症度が改善することがあります。
ただし、
「痩せるまで治療しなくてよい」
ということではありません。
睡眠時無呼吸症候群の程度によっては、CPAPなどの治療が必要になります。
睡眠の質を改善しながら、並行して体重管理を行うことが重要です。
休日も含め、生活リズムを大きくずらさないようにします。
寝る時間を削って運動するより、慢性的な睡眠不足を解消した方がよい場合もあります。
夜更かしと夜食がセットになっている場合には、就寝時間を早めること自体が間食対策になります。
アルコールは寝つきを良く感じさせることがありますが、睡眠の質を悪化させることがあります。
また、いびきや睡眠時無呼吸を悪化させる可能性もあります。
朝に光を浴びることは、体内時計を整える助けになります。
仕事が忙しい方の中には、
「睡眠を1時間削ってジムへ行っています」
という人もいます。
もちろん運動は大切です。
しかし、慢性的に睡眠不足になってしまえば、
食欲増加
疲労
活動量低下
運動パフォーマンス低下
などにつながる可能性があります。
肥満対策では、
食事・運動・睡眠のどれか一つを犠牲にするのではなく、3つを無理なく続ける
という発想が重要です。
肥満・メタボの診療では、食事と運動だけでなく睡眠についても確認することが重要です。
特に、
体重が増えてきた
腹囲が増えた
いびきが大きい
日中眠い
血圧が高い
といった症状が重なっている場合には、睡眠時無呼吸症候群も考える必要があります。
「痩せればすべて解決する」と考えず、必要であれば睡眠そのものを評価することが大切です。
まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
睡眠不足は、
食欲
食行動
夜食・間食
身体活動量
糖代謝
などを介して、肥満やメタボと関係します。
さらに肥満があると睡眠時無呼吸症候群が起こりやすくなり、
肥満 → 睡眠の悪化 → 体重管理がさらに難しくなる
という悪循環が生じることもあります。
だから肥満対策は、
食事+運動+睡眠
の3本柱で考えることが大切です。
食事も運動も頑張っているのになかなか体重が減らない方は、一度、
「自分はきちんと眠れているだろうか?」
と考えてみてください。
睡眠は休むためだけの時間ではありません。
食欲や代謝、日中の活動を整えるための大切な生活習慣です。
体重を減らしたい方には、食事記録だけでなく、
「何時に寝て、何時に起きたか」
を1週間記録してみることもおすすめです。
そこに、
夜食・飲酒・翌日の眠気
も書いてみると、
「睡眠不足の日ほど夜食が多い」
「飲酒した翌日は動いていない」
など、自分では気づかなかったパターンが見えてくることがあります。
「ストレスがたまると、つい食べてしまう」。
次回は、ストレスが食欲・間食・睡眠・飲酒・身体活動にどう影響して体重増加につながるのか、「ストレスホルモンだけ」の単純な説明ではなく、実際の生活に即して解説します。