第1678回:院長ブログ:お酒は太る?アルコールと内臓脂肪・中性脂肪の関係 ~「糖質ゼロなら太らない」は本当でしょうか?~
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肥満・メタボが気になる方から、よく聞く言葉があります。
「ビールは太るからハイボールにしています」
「糖質ゼロのお酒なら大丈夫ですよね?」
「お酒ではなく、おつまみが太るんですよね?」
確かに、ビール、日本酒、ワイン、蒸留酒などでは糖質量に違いがあります。
しかし、
「糖質が少ないお酒=太らないお酒」
ではありません。
なぜなら、アルコールそのものにもエネルギーがあるからです。
アルコールは、1gあたり約7kcalのエネルギーを持っています。
これは、
糖質・タンパク質:1gあたり約4kcal
脂質:1gあたり約9kcal
と比較しても、決して少なくありません。
つまり、
焼酎
ウイスキー
ジン
ウォッカ
など糖質をほとんど含まない蒸留酒であっても、アルコールを含んでいる以上、エネルギーはあります。
「糖質ゼロ」という表示だけを見て、
「いくら飲んでも体重には影響しない」
と考えるのは適切ではありません。
アルコールについて、
「エンプティカロリーだから太らない」
と聞いたことがある方もいるかもしれません。
しかし、エンプティカロリーとは基本的に、栄養価が乏しい割にエネルギーを含むという意味で使われる表現です。
「体に吸収されないカロリー」という意味ではありません。
アルコールは体内で代謝されます。
したがって、
「アルコールのカロリーは無視してよい」
ということではありません。
アルコールは体にとって蓄えておくことができない物質です。
そのため飲酒すると、肝臓ではアルコールの処理が優先されます。
この間、脂肪酸の酸化など他のエネルギー代謝にも影響が生じます。
さらに、飲酒量や食事内容などによっては、肝臓での脂質代謝が乱れ、
中性脂肪の上昇や脂肪肝
につながることがあります。
つまり、お酒の問題は単純に、
「お酒のカロリー分だけ太る」
という話ではありません。

【図1:お酒を飲むと体の中で何が起こる?― アルコール代謝・脂肪燃焼・中性脂肪の関係】
健康診断で、
「中性脂肪が高い」
と言われた方は、飲酒量を一度確認してみましょう。
アルコールの摂取は、肝臓での脂質代謝などを介して中性脂肪の上昇に関係します。
特に、
毎日飲む
一回の飲酒量が多い
夜遅くまで飲む
高エネルギーのおつまみを食べる
といった習慣が重なると、体重管理にも脂質管理にも不利になりやすくなります。
中性脂肪が高い場合には、
「脂っこいものを食べていないから大丈夫」
ではなく、アルコールについても振り返ることが重要です。
脂肪肝とは、肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態です。
肥満や糖代謝異常などを背景とした脂肪肝もあれば、アルコールが大きく関係する脂肪性肝障害もあります。
実際には、
肥満+飲酒
の両方が重なっている方も少なくありません。
つまり、
「太っているから脂肪肝なのか」
「お酒のせいなのか」
と必ずしも二者択一で考える必要はありません。
両方が肝臓へ負担をかけている可能性があります。
飲酒による体重増加を考えるとき、アルコールそのものと同じくらい重要なのが食事です。
たとえば、
唐揚げ
ポテトフライ
チーズ
ピザ
締めのラーメン
など。
お酒を飲むと、このような食品を一緒に食べる機会が増えることがあります。
また、アルコールによって判断力や自己抑制が低下すると、
「今日は食べないつもりだったのに、結局食べてしまった」
ということも起こります。
つまり、
お酒+おつまみ+締め
まで含めて、一回の飲酒として考える必要があります。
いわゆる「ビール腹」という言葉があります。
しかし、ビールだけが特別にお腹へ脂肪をつけるわけではありません。
問題なのは、
アルコールからのエネルギー
一緒に食べる食品
飲酒に伴う生活習慣
などが重なって、長期的に摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ることです。
その結果、体重や内臓脂肪が増えていきます。
したがって、
「ビールをハイボールに変えればビール腹がなくなる」
とは限りません。
これもよくある誤解です。
糖質ゼロ・糖質オフの商品は、糖質摂取量を抑えるという意味では選択肢になります。
しかし、
アルコール量が同じなら、アルコール由来のエネルギーは残ります。
さらに、飲酒量そのものが増えてしまえば意味がありません。
「糖質ゼロだから安心」と考えて、
2杯だったものが4杯になる。
これでは肥満・メタボ対策として逆効果になることがあります。
大切なのは、
糖質だけでなく「純アルコール量」と飲酒全体を見ること
です。
飲酒については、
一週間の合計量だけでなく、一回にどれくらい飲むか
も重要です。
平日に我慢して、
「土曜日に一週間分まとめて飲む」
という方法はおすすめできません。
短時間に大量のアルコールを摂取する飲み方は、急性アルコール中毒や事故などの危険性も高まります。
肥満対策だけでなく健康全体を考えて、一度に大量に飲まないことが大切です。
飲酒量が多かった人では、減酒や禁酒によって摂取エネルギーが減り、体重や中性脂肪などが改善することがあります。
しかし、
「お酒をやめれば全員必ず痩せる」
わけではありません。
お酒をやめた代わりに、
甘いものを食べる
間食が増える
食事量が増える
ということもあります。
重要なのは、
飲酒を含めた生活全体がどう変化したか
を見ることです。
完全に禁酒しなければ体重管理ができないわけではありません。
まずは、自分の飲酒パターンを把握しましょう。
ビールかハイボールかという種類だけでなく、量を確認します。
飲酒時の摂取量を正確に把握するには、お酒だけでなく食べたものも記録します。
「毎晩なんとなく飲む」という習慣を見直すきっかけになります。
目の前にあると飲みやすくなります。環境を変えることも有効です。
飲酒時間が長くなるほど、追加の飲酒や夜食につながりやすくなります。
【図2:肥満・メタボが気になる人の「お酒との付き合い方」5つのポイント】
肥満の原因は一つではありません。
飲酒習慣がある人でも、
食事量
間食
運動不足
睡眠不足
ストレス
など別の要因が体重増加に大きく影響している場合があります。
一方で、
「お酒だけは絶対に変えたくない」
としてしまうと、改善できる大きな要因を見逃すことがあります。
まず、
自分の一週間の飲酒量を正確に把握する
ことから始めてみましょう。
肥満・メタボの診療では、飲酒についても重要な生活習慣の一つとして確認します。
特に、
腹囲が増えている
中性脂肪が高い
血糖・HbA1cが上昇している
脂肪肝を指摘された
血圧が高い
という方では、食事だけでなく飲酒習慣を振り返ることが重要です。
「糖質ゼロのお酒だから大丈夫」と考えるのではなく、アルコール量・食事・体重・検査値をセットで考えることをおすすめします。
まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
お酒で太るかどうかを考えるとき、
「糖質があるか、ないか」だけを見るのは不十分です。
アルコールそのものにもエネルギーがあります。
さらに飲酒は、
中性脂肪
脂肪肝
食欲・食事量
睡眠
身体活動
などにも影響します。
つまり、
アルコール+おつまみ+生活習慣
まで含めて考えることが大切です。
「ビールをハイボールに変えたから安心」ではなく、
何を飲むか以上に、どれくらい・どのように飲んでいるか。
ここを見直してみましょう。
お酒が好きな方にとって、
「一生飲んではいけません」
という指導では長続きしないことがあります。
まずは、
自分が実際に一週間でどれくらい飲んでいるか
を知ること。
そして体重・腹囲・中性脂肪・肝機能などを見ながら、減らせるところから現実的に改善することが大切です。
飲酒量を減らしたい方は、最初から「禁酒」を目標にするより、
「いつもの1杯を減らす」
ところから始める方法もあります。
さらに重要なのが、
お酒と一緒に何を食べているか。
一週間だけでも、
お酒の種類・量・おつまみ・締め
を全部書いてみてください。
体重が増える原因が意外とはっきり見えてくることがあります。
「そんなに食べていないのに、なぜか痩せない」。
次回は、こうしたときに見落としやすい飲み物・間食・調味料・外食・一口だけのつまみ食いなどを取り上げ、実際の摂取量と自分の認識がずれる理由を解説します。