第1691回:院長ブログ:筋トレはダイエットに必要?筋肉を落とさず脂肪を減らす方法 ~体重だけを減らすのではなく、「筋肉を守って脂肪を減らす」ことを目指しましょう~
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ダイエットをするとき、多くの方が考えるのは、
「体重を減らしたい」
ということです。
しかし、本当に減らしたいのは何でしょうか。
多くの場合、減らしたいのは余分な体脂肪であり、筋肉まで減らしたいわけではありません。
ところが食事量を減らして体重を落とすと、体脂肪だけでなく、筋肉を含む除脂肪組織も減少することがあります。
つまり、
体重が10kg減った=脂肪だけが10kg減った
とは限らないのです。
体重を減らすために摂取エネルギーを減らすと、身体は蓄えているエネルギーを利用します。
その際、主に体脂肪を減らしたいのですが、条件によっては筋肉も失われやすくなります。
特に注意したいのが、
極端な食事制限
タンパク質不足
運動不足
急激な減量
です。
「食べなければ食べないほどよい」
というダイエットは、体重は減っても理想的な身体組成にならない可能性があります。
筋肉は単に「見た目をよくするため」の組織ではありません。
筋肉には、
身体を動かす
姿勢を維持する
転倒を防ぐ
糖を取り込む
日常生活の身体機能を維持する
など、さまざまな役割があります。
特に中高年では、肥満対策と同時に**サルコペニア(加齢などによる筋肉量・筋力・身体機能の低下)**にも注意する必要があります。
体重を減らした結果、
「痩せたけれど筋力まで落ちた」
という状態は避けたいところです。
減量中に筋肉をできるだけ維持するためには、
筋肉に「この筋肉は必要です」という刺激を与える
ことが大切です。
その代表が筋力トレーニングです。
筋肉に適切な負荷をかけることで、食事療法だけで減量する場合と比べ、筋力や除脂肪量を維持する助けになります。
したがってダイエット中の筋トレは、
「筋肉ムキムキになるため」ではなく、「必要な筋肉を守るため」
という意味でも重要なのです。
筋トレについてよく聞くのが、
「筋肉を増やせば基礎代謝が大幅に上がるので、寝ていてもどんどん痩せる」
という説明です。
これは少し誇張されています。
筋肉はエネルギーを消費する組織ですから、筋肉量はエネルギー消費と関係します。
しかし、筋肉を少し増やしただけで基礎代謝が劇的に増え、
「食事を気にしなくても太らない身体になる」
わけではありません。
筋トレの価値を「基礎代謝アップ」だけで説明する必要はないのです。
肥満・メタボ対策における筋トレには、
筋肉・筋力を維持する
身体機能を維持する
糖代謝を改善する
インスリン感受性の改善に役立つ
減量後の身体機能を守る
将来のサルコペニア対策になる
といった重要な役割があります。
体重計に表れない効果も多いのです。
【図1:なぜダイエット中に筋トレが必要?―「体重を減らす」から「脂肪を減らして筋肉を守る」へ】
これは「どちらか一つ」を選ぶ必要はありません。
ウォーキングなどの有酸素運動と筋トレでは役割が異なります。
活動量・エネルギー消費を増やす
心肺機能を高める
血圧・血糖・脂質などの改善に役立つ
筋肉・筋力を守る
身体機能を維持する
糖代謝の改善に役立つ
したがって、
有酸素運動+筋力トレーニング
という組み合わせがおすすめです。
これも違います。
筋トレをしたからといって、一日中座っていてよいわけではありません。
歩く
階段を使う
買い物に行く
立って作業する
など、日常生活の身体活動も重要です。
つまり、
筋トレをする日だけ運動する
のではなく、一日を通した活動量も意識しましょう。
筋トレをしていても、身体をつくる材料が不足していれば筋肉を維持しにくくなります。
そこで重要なのがタンパク質です。
代表的な食品として、
肉
魚
卵
大豆製品
乳製品
などがあります。
糖質制限を行う場合でも、単に主食を抜くだけではなく、こうした食品から必要なタンパク質を確保することが重要です。
タンパク質が重要だからといって、
大量に摂れば、その分だけ筋肉が増える
わけではありません。
年齢、体格、活動量、減量の程度、腎機能などによって適切な摂取量は異なります。
特に慢性腎臓病や蛋白尿がある方では、自己判断で高タンパク食を行わず、医師や管理栄養士などと相談する必要があります。
プロテインは、基本的にはタンパク質を摂取しやすくした食品です。
筋トレをする人全員に必須というわけではありません。
通常の食事から必要量を摂取できているのであれば、必ずしもプロテインを飲む必要はありません。
一方、
食事だけではタンパク質を確保しにくい
朝食のタンパク質が少ない
食事量が少ない
などの場合には、補助的に利用する選択肢があります。
ただし、
「プロテインを飲めば痩せる」
わけではありません。
当院では肥満・メタボ対策として、糖質の摂りすぎを見直すことを重視しています。
しかし、
糖質制限=肉・チーズ・ナッツなどを無制限に食べてよい
という意味ではありません。
減量中は、
糖質
総摂取量
タンパク質
脂質の質
食物繊維
運動
を総合的に考える必要があります。
また、極端な糖質制限と激しい運動を自己流で組み合わせることはおすすめしません。
特に糖尿病治療薬を使用している方では、低血糖などに注意が必要です。
筋トレというと、
「ジムに行って重いバーベルを持ち上げる」
というイメージがあるかもしれません。
しかし、肥満・メタボ対策として筋肉を維持する目的であれば、自宅で始められる運動もあります。
たとえば、
椅子に座った状態から立ち上がり、ゆっくり座ります。
太ももやお尻など、大きな筋肉を使います。
ふくらはぎの筋肉を使います。
通常の腕立て伏せが難しい方でも負荷を調整しやすい方法です。
大切なのは、自分の体力に合った負荷から始めることです。
筋トレは、同じ筋肉を毎日限界まで追い込めばよいわけではありません。
筋肉には運動後の回復も必要です。
特に運動習慣がない方は、
まず少ない回数・無理のない負荷から始め、継続できる習慣をつくる
ことを優先してください。
筋肉痛が強い状態で無理に同じ運動を繰り返す必要はありません。
筋トレを始めると、
「体重が思ったほど減らない」
と感じることがあります。
しかし体重だけでは、
脂肪
筋肉
水分
の変化を区別できません。
たとえば、
体重はほぼ同じでも腹囲が減っている
ということがあります。
その場合、身体組成がよい方向へ変化している可能性があります。
したがって減量では、
体重だけでなく腹囲も確認する
ことをおすすめします。
家庭用体組成計で体脂肪率を測定している方も多いでしょう。
便利な指標ですが、測定値は、
水分状態
食事
運動
測定時間
などによって変動します。
1回の数字に一喜一憂するより、
できるだけ同じ条件で測り、長期的な傾向を見る
ようにしましょう。
「食べないダイエット」は筋肉も失いやすくなります。
甘い飲み物、お菓子、主食などの量を確認します。
肉・魚・卵・大豆製品などを上手に利用します。
大きな筋肉を中心に無理なく刺激します。
有酸素運動と筋トレは役割が異なります。
座りっぱなしを減らします。
腹囲、筋力、血圧、血糖、脂質なども確認しましょう。
【図2:筋肉を守りながら体脂肪を減らす7つの習慣― 食事・タンパク質・筋トレ・有酸素運動】
肥満治療で重要なのは、
「何kg減ったか」だけではありません。
体重を落とすことだけを目標に極端な食事制限をすると、筋肉まで失ってしまう可能性があります。
当院では、
糖質の摂りすぎを見直す
必要なタンパク質を確保する
ウォーキングなどで活動量を増やす
筋力トレーニングで筋肉を守る
という組み合わせを重視しています。
目標は、
「軽い身体」ではなく、「余分な体脂肪が少なく、必要な筋肉が保たれた身体」
です。
ダイエット中の筋トレには大きな意味があります。
ただし、
「筋肉をつければ基礎代謝が劇的に上がって勝手に痩せる」
という考え方は適切ではありません。
筋トレの重要な役割は、
減量中の筋肉・筋力を守ること
にあります。
そのうえで、
食事の見直し
適切なタンパク質摂取
筋力トレーニング
有酸素運動
日常生活の身体活動
を組み合わせます。
「体重を落とす」だけでなく、筋肉を守りながら余分な体脂肪を減らすことを目指しましょう。
筋トレは、若い人やアスリートだけのものではありません。
むしろ中高年では、減量と同時に筋肉を守ることが非常に重要です。
ジムに通わなくても、
椅子から立つ
スクワットをする
かかとを上げる
といった運動から始められます。
肥満・メタボがあり、運動を始めてもよいか心配な方は、まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
体重計の数字を減らすだけなら、食べる量を極端に減らせば体重は落ちるかもしれません。
しかし、それが理想的な減量とは限りません。
大切なのは、
「何kg減ったか」ではなく、「何を減らし、何を残したか」。
減らしたいのは余分な体脂肪。
できるだけ守りたいのは筋肉です。
そのために、食事+タンパク質+筋トレ+有酸素運動をセットで考えましょう。
「体重はそれほど多くないのに、お腹だけ出ている」
「内臓脂肪と皮下脂肪は何が違う?」
「内臓脂肪はどうすれば減らせる?」
次回は、内臓脂肪と皮下脂肪の違い、なぜ内臓脂肪がメタボと関係するのか、糖質・アルコール・運動・睡眠との関係、内臓脂肪を減らすための実践法まで詳しく解説します。