抗生剤で大動脈解離?
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こんにちは。
船橋駅前の内科・循環器(心臓血管)内科・糖尿病内科『いちかわクリニック』院長の市川です。
大動脈解離は、時々ニュースでも報道される突然死を来す怖い病気です。
大動脈解離についてはこちらを。
さて、この大動脈解離が抗生剤を飲むことによりより起こりやすくなる可能性があるとしたら?
こんな研究があるのです。
これは、考えさせられます。
本来、大動脈は3層構造でできています。
これを、内側から内膜・中膜・外膜と言います。
そして、なんらかの原因により内膜に傷がつき、そこから強い血圧によって中膜まで亀裂が入り、一気に中膜内をえぐるように上下に切れ込みが入ります。
つまり壁の中が避けていくわけです(解離と言います)。
これを大動脈解離と言います。
そして、フルオロキノロンと呼ばれる抗生剤にはアキレス腱断裂などのコラーゲン系の副作用のあることが知られています。
つまり、この抗生剤を内服することにより、コラーゲン系の副作用が生じると、コラーゲンの存在する中膜が弱くなり、亀裂が入りやすく、そのため大動脈解離を起こしやすくなるのではないか?ということです。
実際、その可能性が「Risk of Aortic Dissection and Aortic Aneurysm in Patients Taking Oral Fluoroquinolone: 」で報告されているのです。
これによると、、、、
1477人の大動脈瘤または大動脈解離を発症した人を調べたところ、60日以内に抗生剤のフルオロキノロンを処方されるということが、大動脈解離の発症リスクの増加と関連していたとしています。
これは大きな問題です。
確定的とはこの研究のみでは言えないとは思います。しかし、可能性があるのです。
この抗生剤は日本ではクリニック等にて尿路感染(膀胱炎や腎盂腎炎等)などに頻繁に処方される薬です。それゆえ、現在では耐性も出てきているとされているほどです。
そんな状況でも、現在尿路感染にはまずこの薬が処方されることが多いでしょう。
しかしながら、この研究も考慮すると、動脈硬化を持つ高齢の方の尿路感染に盲目的にこの系統の抗生剤を処方することはやるべきではないと考えます。
尿路感染は、特に女性の方に多いのが特徴です。
そして、その多くは大腸菌が原因となりますが、特に閉経後の女性における膀胱炎の原因菌はフルオロキノロンに耐性を持ったものが多いのです。
閉経後は女性は女性ホルモンの減少からコレステロールの上昇をきたしやすく、それゆえ動脈硬化のリスクが高い集団です。
ですから、そうであるならば、盲目的にこのような方の尿路感染にフルオロキノンの抗生剤を処方するのは慎むべきではないかと思っています。
でも、安心してください。
ちゃんと代わりの抗生剤もありますし、むしろ現在では、それが閉経後の女性の尿路感染の第一選択の薬とされていますので。
その人に合った抗生剤の処方を今後も続けていきたいものです。
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