いちかわクリニック

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第15回:食べてないのに太る理由

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第15回:食べてないのに太る理由

こんにちは。

船橋駅前の内科・循環器(心臓血管)内科・糖尿病内科『いちかわクリニック』院長の市川です。

 


『全然食べてないんだけどなー、でも痩せないし、糖尿も良くならないよ』

よく外来で聞く言葉です。

『そうですか、遺伝もあるかもしれないし、じゃあ薬増やしましょう』

これ、間違った対応です。

 

患者さんは食べていないと言う。

でも、太ってくるし糖尿も良くならないと言う現実。

 

なぜでしょう?。

 

実は、こんなデータがあるのです(論文:Public Health Nutrition: 9(5), 651–657)。

まず、183人の健康な30歳以上の日本人(大阪、長野、鳥取在住)を集めます。

その上で、16日間にわたり食事の記録をつけました。

食事の記録の方法は、各々が食べる前に記録し、可能な限り重さまで図ります(半秤量食事記録法と言います)。そして、その記録を管理栄養士が詳細に検討し、食事から摂取したエネルギー量を算出します。

そして、各々の年齢・体重・性別から基礎代謝量を算出します。

基礎代謝量とは、全く活動しなくても消費するエネルギーです。

これに対して、人は通常の生活を営んでいますので、基礎代謝量の1.75倍が実際に消費するエネルギーと言われています。

つまり、食事記録により算出された食事のエネルギーと基礎代謝量の1.75倍のエネルギー量は同じであるはずです(体重の大きな変化はない前提です)。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、記録した食事内容のエネルギー量が実際に消費するエネルギー量を下回れば痩せてしまいます。

試験期間で体重の増減はありませんから、記録した食事内容のエネルギー量が少ないと言うことは、結果的に記録した食事量が少ないと言うことです。

そして、結果を見てみると、、、、

 

 

 

 

 

 

左が男性。右が女性です。青が50歳以上、赤が30歳から49歳の人です。

そして、各々痩せ気味、普通体型、太り気味でグループを作りました。

グラフの左の数字は、食事からのエネルギー量を基礎代謝量で割った数字です。

つまり、この数字が1.75を下回ると、食事内容を正確に把握しておらず、少なく見積もっていると言うことです。

ほとんどの集団が1.75を下回っており、さらに太っている人ほどより食事内容を正確に把握できていないと言うことです。

 

この数字からもわかるように、人は食べたものを忘れるようです。

太っていればいるほど忘れるようです。

 

では、食べたもののうちどれほど忘れてしまうのか?

ある研究(Ann Intern Med. 2006 Sep 5;145(5):326-32.)によると、人は食べたものの大体1~2割を忘れるようです。

しかも、ほかの研究(J Am Diet Assoc. 1985 Nov;85(11):1437-42.)では、食べたもののうちどのようなものを忘れるのかを調べた結果、ケーキ・ビスケット・デザートなど皆さん大好きなものほど特に多く忘れてしまうと言うものでした。

なんだか納得の結果ですし、人間ってとっても自分に都合のいい生き物のようです。

 

どうですか?

 

忘れてしまうのは、故意ではないと思います。

このデータを以前知ってから、私は患者さんに対して、『え〜、本当ですか〜?』とは思わなくなりました。

そして、一つの解決策を皆さんに提案しています。

 

3日間でもいいので、自分以外の家族の方などに口に入れたもの全てを逐一書いてもらいます。

もしくは全てをスマホで写真にとって来てもらいます。

そうすると、結構皆さん食べてます。そして、本当に悪気はなく食べたことを忘れているものです。

この解決策の実行は結構負担です。

でも、外来で上記研究の結果をしっかりご説明することにより、いまの自分を知るために皆さん頑張って記録していただけます。

そして、気づいていなかった自分を発見し、生活習慣の改善が進んでいくのです。

結果として薬が増えるどころか減る人もいます。

 

人って面白いですね。

 

 

 

 

 

 

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