第1700回:院長ブログ:肥満と脳卒中の関係は?太ると脳梗塞・脳出血のリスクは上がる? ~肥満そのものだけでなく、高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動までまとめて考えましょう~
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肥満、とくに内臓脂肪型肥満は脳卒中のリスクと関係します。
ただし、
「身体の脂肪がそのまま脳の血管に詰まる」
わけではありません。
肥満によって、
高血圧
糖尿病
脂質異常症
睡眠時無呼吸
心房細動
などが起こりやすくなり、これらが脳卒中のリスクを高めます。
つまり、肥満は脳卒中につながる複数の危険因子が集まりやすくなる土台の一つと考えることができます。
脳卒中は大きく、
脳梗塞
脳出血
くも膜下出血
などに分けられます。
同じ「脳卒中」でも、起こっていることは異なります。
脳梗塞は、脳の血管が詰まり、脳組織への血流が途絶える病気です。
血流が止まると、その先の脳細胞に酸素や栄養が届かなくなります。
治療が遅れるほど脳の障害が広がる可能性があるため、時間との勝負になる病気です。
脳出血は、脳の血管が破れて脳内に出血する病気です。
長年の高血圧などによって脳の細い血管に負担がかかることが、重要な原因の一つです。
したがって肥満から高血圧につながっている場合には、脳梗塞だけでなく脳出血の予防という意味でも血圧管理が重要です。
内臓脂肪が増えると、
インスリン抵抗性
血圧上昇
高中性脂肪
低HDL
高血糖
慢性的な代謝異常
などが起こりやすくなります。
それらが長期間続くと、動脈硬化が進行しやすくなります。
つまり、
内臓脂肪の増加
↓
高血圧・糖尿病・脂質異常症など
↓
動脈硬化
↓
脳や頸動脈などの血管病変
↓
脳梗塞
という流れが考えられます。

【図1:肥満から脳卒中へつながる仕組み― 内臓脂肪→高血圧・糖尿病・脂質異常症→血管障害→脳梗塞・脳出血】
脳卒中を考えるうえで、高血圧は非常に重要な修正可能な危険因子です。
血圧が高い状態が長く続くと、脳の血管に負担がかかります。
その結果、
脳梗塞
脳出血
の両方のリスクが高まります。
肥満の方では、
「体重を減らす」
だけでなく、
家庭血圧を測ること
も非常に重要です。
降圧薬を飲んでいること自体ではなく、実際に血圧が適切にコントロールされているかが重要です。
診察室での血圧だけでなく、家庭血圧を測ることで、
朝の血圧
普段の血圧
薬を飲んでいる時間帯との関係
などがわかります。
肥満・高血圧がある方は、体重と一緒に家庭血圧を記録することをおすすめします。
糖尿病では高血糖やインスリン抵抗性などを背景に、動脈硬化が進行しやすくなります。
さらに糖尿病では、
高血圧
脂質異常症
腎機能障害
などが合併することも少なくありません。
したがって、
HbA1cだけを見ていれば脳卒中予防は十分
というわけではありません。
LDLコレステロールなどのアポB含有リポ蛋白は、動脈硬化の形成に重要です。
特にアテローム血栓性脳梗塞では、頸動脈や頭蓋内動脈などの動脈硬化が関係します。
肥満が改善して中性脂肪が下がっても、LDLが高い場合には別に管理する必要があります。
「痩せたからLDLは高くても大丈夫」ではありません。
脳梗塞は、脳の血管そのものの動脈硬化だけで起こるわけではありません。
重要なのが心房細動です。
心房細動になると心房内の血液がよどみ、血栓ができることがあります。
その血栓が心臓から流れ出し、脳の血管を詰まらせると心原性脳塞栓症を起こします。
肥満は心房細動の発症・持続に関係することが知られています。
さらに肥満では、
高血圧
睡眠時無呼吸
糖尿病
など、心房細動と関係する病態も重なりやすくなります。
そのため肥満・メタボを改善することは、単に血糖や血圧を改善するだけでなく、心房細動を含めた心血管リスク管理という意味でも重要です。
肥満+大きないびき+高血圧がある場合には、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が隠れていることがあります。
睡眠時無呼吸では、
低酸素
交感神経活性化
血圧上昇
などが繰り返されます。
さらに心房細動とも関連します。
肥満患者さんの脳卒中予防では、睡眠まで見ることが大切です。
脳卒中予防では喫煙も重要です。
体重が減っていても、
「タバコを吸っているからプラスマイナスゼロ」
というものではありません。
喫煙は血管に悪影響を及ぼし、脳卒中や心筋梗塞などのリスクを高めます。
肥満改善と同時に禁煙にも取り組みましょう。
肥満がある方では、適切な減量によって、
血圧
血糖
中性脂肪
脂肪肝
睡眠時無呼吸
身体活動
などが改善する可能性があります。
これらは脳卒中リスクを考えるうえで重要な変化です。
したがって、肥満の改善は脳卒中予防につながる重要な取り組みの一つです。
脳卒中の危険因子は肥満だけではありません。
減量に成功しても、
高血圧
高LDLコレステロール
糖尿病
心房細動
喫煙
慢性腎臓病
などが残っていれば、それぞれ適切に管理する必要があります。
重要なのは、
体重を減らすことではなく、脳卒中リスク全体を減らすこと
です。
肥満・メタボの改善では、
甘い飲み物
お菓子
菓子パン
ご飯・パン・麺類の過剰摂取
夜食
などを見直します。
当院では肥満・メタボがある方では、糖質制限を有力な選択肢の一つとして考えています。
糖質摂取量を適切に減らすことで、体重・血糖・中性脂肪などの改善につながる場合があります。
果物にはビタミンや食物繊維などが含まれる一方、果糖などの糖質も含まれます。
肥満・糖尿病・高中性脂肪・脂肪肝などがある方に、
「健康のために果物を積極的にたくさん食べましょう」
とは一律にはおすすめしません。
特に、
果汁ジュース
スムージー
ドライフルーツ
などは糖質を摂取しやすいため注意します。
一方で、丸ごとの果物をすべての方が完全に禁止する必要があるという意味でもありません。
食生活全体と代謝状態を見ながら考えます。
ウォーキングなどの有酸素運動は、
体重管理
血圧
血糖
心肺機能
などの改善に役立ちます。
さらに筋力トレーニングを組み合わせることで、減量中の筋肉を守ります。
ただし、すでに心血管疾患がある方や運動中に胸痛・強い息切れなどが出る方は、運動開始前に医師へ相談してください。
脳卒中では、突然症状が現れることがあります。
特に覚えておきたいのがFASTです。
顔の片側が下がる、笑うと左右差がある
片方の腕に力が入らない、上げていられない
ろれつが回らない、言葉が出ない、話が理解できない
一つでも突然出たら、発症時刻を確認して119番
脳梗塞は治療開始までの時間が非常に重要です。
「少し休めば治るかも」と様子を見ないでください。
脳卒中では、
突然の視野障害
突然の激しいめまい・ふらつき
突然歩けなくなる
突然の意識障害
突然の非常に激しい頭痛
などが現れることもあります。
特に経験したことのない突然の激しい頭痛は、くも膜下出血などの可能性があります。
緊急性が高い症状では119番を利用してください。
いいえ。
数分から短時間で症状が消えることがあります。
これは**一過性脳虚血発作(TIA)**の可能性があります。
TIAは、その後の脳梗塞の警告となることがあります。
「治ったから明日病院へ行こう」ではなく、速やかな医学的評価が必要です。
体重だけでなく腹囲も確認します。
家庭血圧を活用します。
糖尿病を放置しません。
中性脂肪だけでなくLDLも確認します。
脈の乱れや動悸があれば評価します。
生活習慣を総合的に改善します。
突然の神経症状では迷わず119番です。

【図2:肥満から脳卒中を防ぐ7つのポイント― 体重・血圧・血糖・脂質・心房細動を管理】
肥満・メタボの診療では、
「何kg痩せたか」
だけをゴールにしません。
脳卒中を予防するためには、
体重・腹囲
家庭血圧
血糖・HbA1c
中性脂肪・HDL・LDL
腎機能
喫煙
睡眠時無呼吸
不整脈
などを総合的に確認することが重要です。
特に高血圧は脳卒中予防において非常に重要です。
肥満の改善と同時に、必要な薬物治療も適切に行います。
必要に応じて脳神経内科・脳神経外科・循環器などの専門医療機関へご紹介します。
肥満、とくに内臓脂肪型肥満では、
高血圧
糖尿病
脂質異常症
睡眠時無呼吸
心房細動
などが重なりやすくなります。
これらを介して、脳梗塞や脳出血などの脳卒中リスクが高まります。
予防で大切なのは、
内臓脂肪を減らす
血圧を管理する
血糖を管理する
脂質を管理する
禁煙する
運動する
睡眠を整える
心房細動を見逃さない
ことです。
そして脳卒中が疑われるときには、予防とはまったく別の原則があります。
時間を無駄にしないことです。
脳卒中は、発症してからでは後遺症が残ることがあります。
だからこそ、
発症前には危険因子を減らす。
発症したら一刻も早く治療につなげる。
この二つが非常に重要です。
肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症などが重なっている方は、症状がない今のうちから対策を始めましょう。
まずは内科クリニックへご相談ください。
一方、突然の麻痺・言語障害・意識障害などがある場合には、クリニック受診を待たず119番を利用してください。
脳卒中予防というと、
「血液をサラサラにすればいい」
と思われることがあります。
しかし、抗血小板薬や抗凝固薬は誰にでも予防目的で使用する薬ではありません。
一方で、
血圧
糖尿病
LDLコレステロール
喫煙
心房細動
などは、適切に評価・治療することで脳卒中リスクを下げられる重要なポイントです。
肥満を改善することはその土台になりますが、肥満だけを治療して終わりにしないことが大切です。
「肥満だけで腎臓に負担がかかる?」
「糖尿病や高血圧がなくても腎臓病になる?」
「痩せると尿蛋白・尿アルブミンは改善する?」
次回は、肥満・高血圧・糖尿病から慢性腎臓病(CKD)につながる仕組み、肥満関連腎症、尿蛋白・尿アルブミン、eGFRの見方、減量と腎臓保護まで詳しく解説します。