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第1697回:院長ブログ:肥満と脂質異常症の関係は?痩せると中性脂肪・LDL・HDLはどう変わる? ~内臓脂肪と中性脂肪は深く関係。LDLは「体重だけ」では決まりません~

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第1697回:院長ブログ:肥満と脂質異常症の関係は?痩せると中性脂肪・LDL・HDLはどう変わる? ~内臓脂肪と中性脂肪は深く関係。LDLは「体重だけ」では決まりません~

この記事でわかること

  • 肥満と脂質異常症がなぜ一緒に起こりやすいのか
  • 内臓脂肪と中性脂肪(TG)の関係
  • 肥満ではHDLコレステロールが低くなりやすい理由
  • 痩せればLDLコレステロールも必ず下がるのか
  • 糖質の摂りすぎが中性脂肪を増やす理由
  • 糖質制限でLDLが上がることがあるのはなぜか
  • LDLだけでなくnon-HDL-CやApoBを見る意味
  • 減量中に脂質検査をどう評価するか

「太ってから中性脂肪が高くなりました」

健診で、

「中性脂肪が高い」
「HDLが低い」
「LDLも高い」

と言われる方は少なくありません。

肥満、とくに内臓脂肪型肥満では、脂質代謝にも大きな変化が起こります。

ただし、ここで最初に知っておきたいことがあります。

中性脂肪・HDL・LDLは、すべて同じように体重と連動するわけではありません。

特に、

中性脂肪とHDLは内臓脂肪・インスリン抵抗性の影響を受けやすい一方、LDLは遺伝・食事・甲状腺機能など多くの要因に左右されます。


内臓脂肪が増えるとなぜ中性脂肪が上がる?

内臓脂肪が増えると、脂肪組織から肝臓へ流れ込む遊離脂肪酸が増えやすくなります。

さらにインスリン抵抗性が起こると、肝臓での脂質代謝にも影響します。

肝臓では中性脂肪が作られ、それを運ぶためにVLDLというリポ蛋白が血液中へ送り出されます。

その結果、

内臓脂肪の増加
↓
インスリン抵抗性
↓
肝臓への脂肪酸流入・脂肪合成増加
↓
VLDL増加
↓
中性脂肪上昇

という流れが起こりやすくなります。


糖質を摂りすぎても中性脂肪は上がる

「中性脂肪」という名前から、

脂っこいものだけが原因

と思われがちです。

しかし、中性脂肪を考えるうえで糖質の摂りすぎも非常に重要です。

余剰な糖質は肝臓で脂肪合成に利用されることがあります。

特に、

砂糖入り飲料
甘いコーヒー
お菓子
菓子パン
ご飯・パン・麺類の過剰摂取
夜食

などが多い方では注意が必要です。


果糖にも注意

果糖は肝臓で代謝される割合が高く、過剰摂取は肝臓での脂肪合成や中性脂肪上昇に関係します。

特に注意したいのは、

清涼飲料水
果汁飲料
甘い加工食品

などです。

果物にも果糖を含む糖質があります。

果物には食物繊維やビタミンなども含まれますが、肥満・高中性脂肪・脂肪肝・高血糖がある方に、

「健康によいから果物を積極的にたくさん食べる」

ことを一律にはおすすめしません。

特に果汁ジュース、スムージー、ドライフルーツは糖質を摂取しやすいため注意しましょう。


お酒でも中性脂肪は上がる?

上がることがあります。

アルコールは肝臓での脂質代謝に影響し、中性脂肪を上昇させる重要な原因の一つです。

また、

「糖質ゼロのお酒なら太らない」

とは限りません。

アルコールそのものにエネルギーがありますし、飲酒によって食欲が増え、おつまみや夜食が増えることもあります。

中性脂肪が高い方では、飲酒量も必ず確認したいポイントです。


HDLコレステロールはどうなる?

HDLコレステロールは一般に「善玉コレステロール」と呼ばれています。

内臓脂肪型肥満やインスリン抵抗性では、

中性脂肪が高く、HDLが低い

という組み合わせがよくみられます。

この状態はメタボリックシンドロームでみられる代表的な脂質異常のパターンです。

体重・内臓脂肪が減少し、運動習慣が改善すると、中性脂肪が下がりHDLが改善することがあります。


「HDLが高ければ高いほど健康」ではありません

ここも注意が必要です。

HDLは一般に低値が心血管リスクと関連しますが、

単純にHDLを薬や食品で上げれば心筋梗塞が防げる

というものではありません。

また、極端に高いHDLについても必ずしも「高いほどよい」とは考えられていません。

大切なのはHDLだけを単独で見るのではなく、

LDL
中性脂肪
non-HDLコレステロール
糖尿病
血圧
喫煙
腎機能

などを含め、心血管リスク全体を評価することです。


LDLコレステロールは肥満と少し違う

LDLコレステロールについては、中性脂肪とは少し違った考え方が必要です。

LDLは、

遺伝
食事内容
飽和脂肪酸摂取
甲状腺機能
腎疾患
薬剤

などさまざまな影響を受けます。

そのため、

太っている=必ずLDLが高い
痩せる=必ずLDLが下がる

とは限りません。

実際、

「体重は減った。中性脂肪も下がった。でもLDLはあまり変わらない」

ということがあります。

 

 

 

 

 

【図1:肥満で脂質異常症が起こる仕組み― 内臓脂肪・インスリン抵抗性からTG↑・HDL↓へ】


痩せると中性脂肪はどうなる?

肥満・内臓脂肪が背景にある高中性脂肪血症では、減量によって中性脂肪の改善が期待できます。

特に、

糖質の過剰摂取を減らす
アルコールを見直す
内臓脂肪を減らす
運動する

ことが重要です。

中性脂肪は食事や飲酒の影響を比較的受けやすいため、生活習慣を改善すると大きく変化する方もいます。


痩せるとHDLはどうなる?

減量や運動によって、低かったHDLが改善する場合があります。

ただしHDLだけを上げることを治療目標にするのではなく、

内臓脂肪を減らし、TG・血糖・血圧など代謝全体を改善する

ことを目指します。


痩せるとLDLはどうなる?

LDLも改善する方はいます。

しかし、必ず下がるわけではありません。

特に糖質制限で体重が減り、中性脂肪が大きく改善しているにもかかわらず、LDLが上昇するケースがあります。

ここで、

「体重が減っているからLDLは無視してよい」

と判断するのは適切ではありません。


糖質制限でLDLが上がることがある?

あります。

糖質制限そのものが全員のLDLを上げるわけではありませんが、食事内容や個人差によってLDLが上昇することがあります。

特に、

バター
生クリーム
脂身の多い肉
加工肉
高脂肪の乳製品

など飽和脂肪酸の多い食品が大幅に増えていないか確認します。


「糖質制限=脂を無制限に食べてよい」ではありません

当院では、肥満・メタボの方に糖質制限を積極的な選択肢として取り入れています。

しかし、

糖質を減らした分、バター・生クリーム・脂身・チーズを無制限に増やす

という方法をすすめているわけではありません。

脂質を摂る場合にも、量と質を考えます。

魚、ナッツ、オリーブオイルなどを上手に取り入れることは選択肢になりますが、これらもエネルギーを含むため無制限ではありません。

またナッツ類は種類によって糖質量が異なり、カシューナッツはアーモンドやクルミ、マカダミアナッツなどと比べて糖質が多めなので、糖質制限中は量にも注意します。


LDLはなぜ重要?

LDLコレステロールは、動脈硬化性心血管疾患との因果関係が確立している重要なリスク因子です。

したがって、

「中性脂肪が下がったからLDLは高くても問題ない」

とは言えません。

特に、

冠動脈疾患
脳梗塞
末梢動脈疾患
糖尿病
慢性腎臓病
家族性高コレステロール血症

などがある方では、より厳格なLDL管理が必要になることがあります。

目標値は一律ではなく、個々の心血管リスクによって決めます。


LDLの「数」だけで十分?

一般診療ではLDLコレステロールが非常に重要な指標です。

ただし、特に中性脂肪が高い場合などには、non-HDLコレステロールも参考になります。

non-HDL-Cは、

総コレステロール − HDLコレステロール

で求められます。

LDLだけでなく、動脈硬化に関係する複数のアポB含有リポ蛋白をまとめて反映する指標として利用できます。


ApoBとは?

ApoB(アポリポ蛋白B)は、LDLやVLDL、そのレムナントなど、動脈硬化に関係するリポ蛋白粒子に存在する主要な構造タンパクです。

そのためApoBを測定すると、動脈硬化性リポ蛋白粒子の数をより直接的に反映する指標として役立つ場合があります。

特に、

肥満
メタボ
糖尿病
高中性脂肪血症

では、LDLコレステロール値と粒子数が必ずしも一致しないことがあります。

このような場合、non-HDL-CやApoBがリスク評価の補助になります。


小型LDL(small dense LDL)は?

内臓脂肪型肥満や高中性脂肪血症では、small dense LDLと呼ばれる小型で密度の高いLDL粒子が増えやすいことが知られています。

このパターンは動脈硬化リスクと関連します。

ただし、一般診療で全員にsmall dense LDLを測定しなければならないわけではありません。

まず重要なのは、

LDL-C
non-HDL-C
中性脂肪
必要に応じてApoB

などを適切に評価することです。


中性脂肪が非常に高い場合は別の危険も

中性脂肪は動脈硬化だけの問題ではありません。

非常に高値になると、急性膵炎のリスクが高くなります。

特に、

糖尿病のコントロール不良
大量飲酒
肥満
遺伝的な脂質異常
一部の薬剤

などが重なると著しく上昇することがあります。

極端な高中性脂肪血症では、単なる生活習慣改善だけでなく速やかな医学的評価が必要です。


「痩せたから脂質の薬をやめてもいい?」

自己判断で中止しないでください。

減量や食事改善によって脂質値が良くなり、治療内容を変更できる場合はあります。

しかしスタチンなどの薬は、単に検査値を下げるためだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクを低下させる目的で使用されます。

薬が必要かどうかは、

現在のLDL値だけでなく、治療前の値や心血管リスク、既往歴

などを含めて判断します。


肥満+脂質異常症で確認したい検査

脂質だけでなく、

体重
BMI
腹囲
血圧
血糖・HbA1c
中性脂肪
HDL・LDLコレステロール
non-HDLコレステロール
肝機能
腎機能

などを総合的に確認します。

必要に応じてApoBなどを追加することもあります。


脂質異常症を改善する7つのポイント

① 内臓脂肪を減らす

体重だけでなく腹囲にも注目します。

② 糖質の摂りすぎを見直す

甘い飲み物・お菓子・主食の過剰摂取を確認します。

③ 果糖を摂りすぎない

特に清涼飲料水や果汁飲料に注意します。

④ アルコールを見直す

中性脂肪が高い場合には特に重要です。

⑤ 脂質は「量と質」を考える

糖質制限中でも飽和脂肪酸の過剰摂取には注意します。

⑥ ウォーキング+筋トレ

内臓脂肪を減らし、代謝改善を目指します。

⑦ 定期的に脂質を測る

TG・HDL・LDLを別々に評価します。

 

 

 

 

 

 

【図2:肥満に伴う脂質異常症を改善する7つの習慣― 糖質・脂質・飲酒・運動を見直そう】


当院の考え方

肥満に伴う脂質異常症では、

「コレステロールが高い・低い」だけで判断しない

ことが重要です。

特に内臓脂肪型肥満では、

高中性脂肪
低HDL
高血糖
高血圧
脂肪肝

が重なっていることがあります。

当院では糖質の摂りすぎを見直すことを重視していますが、糖質制限中も脂質検査を定期的に確認します。

中性脂肪が大きく改善してもLDLが上昇する場合には、

「痩せたから大丈夫」

で済ませず、食事内容や心血管リスクを改めて評価します。

必要に応じてnon-HDL-CやApoBなども参考にし、薬物療法の必要性を検討します。


まとめ

肥満、とくに内臓脂肪の増加では、

インスリン抵抗性
↓
肝臓への脂肪酸流入・VLDL産生増加
↓
中性脂肪上昇
+
HDL低下

という脂質異常が起こりやすくなります。

一方、LDLコレステロールは体重だけでは決まりません。

そのため減量後も、

中性脂肪は下がったか
HDLはどう変化したか
LDLはどうなったか

をそれぞれ確認することが重要です。

糖質制限は肥満・高中性脂肪血症に有力な選択肢ですが、「糖質を減らしたから脂質は無制限」ではありません。

体重・腹囲・血糖・血圧・肝臓まで含めて、代謝全体を改善していきましょう。


当院からのメッセージ

健診で、

「中性脂肪が高い」

「HDLが低い」

「LDLが高い」

と言われたら、3つをまとめて「コレステロールの問題」と考えないことが大切です。

それぞれ意味が異なります。

特に肥満や腹囲増加がある方では、内臓脂肪・糖質摂取・飲酒・血糖・脂肪肝まで一緒に確認してみましょう。

まずは内科クリニックへご相談ください。

必要に応じて専門医療機関へご紹介します。


院長のワンポイントアドバイス

減量に成功して、

体重↓
腹囲↓
中性脂肪↓
HbA1c↓

となれば、非常によい変化です。

しかし、

LDL↑

となった場合に、

「他が良くなったからLDLは気にしなくてよい」

とは考えません。

糖質制限中にLDLが上昇した場合には、飽和脂肪酸の摂取量、LDL・non-HDL-C、必要に応じてApoB、そしてその方自身の心血管リスクを確認します。

一つの数字だけで食事療法の良し悪しを判断せず、全体を見て調整することが大切です。


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