第1699回:院長ブログ:肥満と心臓病の関係は?太ると心筋梗塞・心不全のリスクは上がる? ~肥満そのものだけでなく、高血圧・糖尿病・脂質異常症・睡眠時無呼吸の重なりが心臓を傷めます~
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肥満、とくに内臓脂肪型肥満は心血管疾患と深く関係しています。
ただし、
「脂肪が増えたから、その脂肪が直接心臓の血管を詰まらせる」
という単純な話ではありません。
肥満によって、
高血圧
糖尿病
脂質異常症
脂肪肝
睡眠時無呼吸
慢性的な代謝異常
などが起こりやすくなります。
これらが重なることで、心臓や血管への負担が増えていきます。
脂肪組織は単に余ったエネルギーを蓄えているだけではありません。
さまざまな生理活性物質を分泌する内分泌臓器としての働きがあります。
内臓脂肪が過剰になると、そのバランスが崩れ、
インスリン抵抗性
慢性炎症
脂質代謝異常
血管機能の異常
などにつながります。
これらが長期間続くことが、動脈硬化を進める背景の一つになります。
動脈硬化とは、単純に
「血管が年齢とともに硬くなること」
だけではありません。
心筋梗塞で特に重要なのが**粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)**です。
血液中のLDLなどのアポB含有リポ蛋白が動脈壁に入り込み、炎症反応などを伴いながらプラークが形成されます。
プラークが大きくなれば血管が狭くなることがあります。
さらに問題なのが、プラークが破綻する場合です。
冠動脈のプラークが破綻・びらんすると、その部分に血栓が形成されます。
血栓によって冠動脈の血流が急激に低下・途絶すると、心筋に十分な酸素が届かなくなります。
これが急性心筋梗塞につながります。
つまり、
内臓脂肪・代謝異常
↓
高血圧・糖尿病・脂質異常症など
↓
動脈硬化が進行
↓
冠動脈プラーク
↓
プラーク破綻・血栓形成
↓
心筋梗塞
という流れです。

【図1:肥満から心筋梗塞へ― 内臓脂肪→高血圧・糖尿病・脂質異常症→動脈硬化→冠動脈血栓】
前回の記事で解説したように、LDLコレステロールは動脈硬化性心血管疾患の重要な原因因子です。
肥満が改善して、
体重↓
腹囲↓
中性脂肪↓
HbA1c↓
となっても、LDLが高い場合には別に評価する必要があります。
「痩せたからLDLが高くても大丈夫」
ではありません。
内臓脂肪型肥満では、
中性脂肪が高い
HDLコレステロールが低い
というパターンがよくみられます。
さらに、
small dense LDL
レムナントリポ蛋白
ApoB含有粒子
などの動脈硬化に関連する変化を伴うことがあります。
そのためLDLだけでなく、必要に応じてnon-HDLコレステロールやApoBなども含めて評価することがあります。
血圧が高い状態が続くと、血管壁や心臓に持続的な負荷がかかります。
心臓は高い圧力に逆らって血液を送り出さなければならないため、左室肥大などの変化を起こすことがあります。
また高血圧は、
心筋梗塞
脳卒中
心不全
慢性腎臓病
などの重要なリスク因子です。
肥満+高血圧を放置しないことが重要です。
糖尿病も動脈硬化性心血管疾患の重要なリスク因子です。
高血糖だけでなく、
インスリン抵抗性
脂質異常
炎症
血管内皮機能の異常
などが複雑に関係します。
そのため肥満を伴う糖尿病では、
HbA1cだけを下げれば心臓のリスク管理は完了
ではありません。
血圧・脂質・体重・喫煙・腎機能などを総合的に管理します。
それぞれが別々の病気に見えますが、内臓脂肪型肥満では同じ患者さんに重なりやすくなります。
そして心血管リスクは、
一つだけを見るのではなく、複数の危険因子が重なっているか
を見ることが非常に重要です。
これがメタボリックシンドロームを管理する大きな理由の一つです。
前回解説した閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)では、睡眠中に、
低酸素
覚醒反応
交感神経活性化
を繰り返します。
OSAは高血圧や心房細動などの心血管疾患と関連します。
肥満があり、
大きないびき
睡眠中の無呼吸
日中の眠気
治療しても血圧が高い
などがある場合には、睡眠時無呼吸の評価も検討します。
関係します。
心不全とは、
「心臓が完全に止まりかけている状態」
という意味ではありません。
心臓のポンプ機能や拡張機能などに問題が生じ、身体が必要とする血液を十分に送り出せない、あるいはそのために心臓内の圧が高くなる病態です。
体格が大きくなると、身体全体へ血液を送るため心拍出量が増えることがあります。
さらに、
高血圧
糖尿病
腎機能障害
睡眠時無呼吸
などが加わると、心臓への負担はさらに増えます。
長期間続けば心臓の構造や機能に変化が起こり、心不全につながる可能性があります。
肥満との関連で近年特に重要なのが、**左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)**です。
心エコーで心臓の収縮力が一見保たれていても、心不全になることがあります。
肥満、高血圧、糖尿病、加齢、心房細動、腎機能障害などはHFpEFと深く関係します。
そのため、
「心臓の収縮率が正常だから心不全ではない」
とは限りません。
肥満の方が階段で息切れすると、
「太っているから仕方ない」
と考えてしまうことがあります。
しかし息切れの原因には、
運動不足
心不全
狭心症
不整脈
肺疾患
貧血
睡眠時無呼吸
などさまざまなものがあります。
以前より明らかに息切れしやすくなった場合には、肥満だけのせいにしないことが重要です。
肥満があると足がむくむことがありますが、心不全、腎疾患、静脈疾患、薬剤などでもむくみは起こります。
特に、
息切れ+両足のむくみ
急な体重増加
横になると息苦しい
夜中に息苦しくて目が覚める
などがある場合には、心不全の評価が必要です。
肥満がある方では、適切な減量によって、
血圧
血糖
中性脂肪
脂肪肝
睡眠時無呼吸
身体活動能力
などの改善が期待できます。
これらは心血管リスクを考えるうえで重要な変化です。
したがって、肥満の改善は心臓病予防の重要な柱の一つです。
心臓病予防では、
体重が減った=すべて解決
ではありません。
減量しても、
LDLが高い
血圧が高い
糖尿病がある
喫煙している
腎機能が低下している
場合には、それぞれ適切に治療する必要があります。
体重は重要ですが、心血管リスク全体の一部分です。
いいえ。
短期間の極端な食事制限によって、
筋肉量の低下
栄養不足
脱水
リバウンド
などが起こることがあります。
特に高齢者や心疾患のある方では、無理な減量が適さない場合もあります。
筋肉をできるだけ守りながら内臓脂肪を減らすことを目指します。
肥満・メタボの改善では、
甘い飲み物
お菓子
菓子パン
ご飯・パン・麺類の過剰摂取
夜食
などを見直します。
当院では、肥満・メタボの方では糖質制限を有力な食事療法の一つとして考えています。
糖質摂取を適切に減らすことで、体重・中性脂肪・血糖などの改善につながる場合があります。
糖質制限をするときに、
「糖質を減らしたから、バター・脂身・生クリーム・チーズはいくら食べてもよい」
という考え方はおすすめしません。
LDLが上昇する方もいるため、
LDL-C
中性脂肪
HDL-C
non-HDL-C
必要に応じてApoB
などを確認します。
心臓病予防では、糖質だけでなく脂質の質と量も重要です。
ウォーキングなどの有酸素運動は、
体重管理
血圧
インスリン感受性
心肺機能
などの改善に役立ちます。
筋力トレーニングを組み合わせることで、減量中の筋肉を守ることも重要です。
ただし、胸痛や明らかな息切れがある方が自己判断で激しい運動を始めるのは避けましょう。
肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症などがある方で、
胸が締めつけられる
胸を強く圧迫される感じ
胸の痛みが腕・肩・背中・顎などへ広がる
冷汗が出る
強い息苦しさ
突然ぐったりする
などがある場合には、急性冠症候群などの可能性があります。
緊急性が高い症状では119番を利用してください。
糖尿病の患者さんでは、心筋虚血があっても典型的な強い胸痛が出ない場合があります。
息苦しい
吐き気
冷汗
強いだるさ
などが中心になることもあります。
「胸が痛くないから心筋梗塞ではない」と自己判断しないことが大切です。
体重だけでなく腹囲も確認します。
家庭血圧も活用します。
糖尿病やその予備群を放置しません。
TG・HDL・LDLをそれぞれ評価します。
甘い飲み物や過剰な主食などを確認します。
心肺機能と筋肉を守ります。
心臓病のリスクは食事だけでは決まりません。

【図2:肥満から心臓を守る7つの習慣― 体重・血圧・血糖・脂質をまとめて管理】
肥満の患者さんを診るとき、
「体重を何kg減らすか」
だけを見るのでは不十分です。
重要なのは、
腹囲
家庭血圧
血糖・HbA1c
中性脂肪・HDL・LDL
肝機能
腎機能
喫煙
睡眠時無呼吸
などを総合的に評価することです。
肥満は、高血圧・糖尿病・脂質異常症など複数のリスクが集まるきっかけになります。
だからこそ、一つずつではなく心血管リスク全体を下げる治療を考えます。
必要に応じて循環器専門医などへご紹介します。
肥満、とくに内臓脂肪型肥満では、
高血圧
糖尿病
脂質異常症
睡眠時無呼吸
慢性炎症
などが重なりやすくなります。
これらが、
動脈硬化
↓
冠動脈疾患
↓
心筋梗塞
につながる可能性があります。
また肥満は、心臓への持続的な負担や高血圧・糖尿病などを介して、心不全とも関係します。
大切なのは、
「痩せればすべて解決」でも、「薬だけ飲めばよい」でもありません。
体重・腹囲を改善しながら、血圧・血糖・脂質・睡眠・喫煙などを一緒に管理することが心臓を守る基本です。
心筋梗塞は突然起こるように見えます。
しかし、その背景では長い時間をかけて、
肥満
高血圧
糖尿病
脂質異常症
喫煙
などのリスクが積み重なっていることがあります。
症状が出てからではなく、症状がないうちにリスクを見つけて減らすことが予防では重要です。
健診で複数の異常を指摘された方は、まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
肥満と心臓病を考えるとき、
「BMIはいくつか」だけを見ないこと
が大切です。
同じBMIでも、
腹囲が大きい
血圧が高い
HbA1cが高い
中性脂肪やLDLが高い
喫煙している
睡眠時無呼吸がある
方では心血管リスクが大きく異なります。
体重を減らすことをゴールにするのではなく、心筋梗塞・脳卒中・心不全を防ぐために体重を減らす。
この視点で肥満治療を考えましょう。
「肥満そのものが脳卒中を起こす?」
「高血圧・糖尿病・脂質異常症のどれが重要?」
「痩せることで脳卒中を予防できる?」
次回は、肥満から高血圧・糖尿病・脂質異常症・心房細動などを介して脳卒中につながる仕組み、脳梗塞と脳出血の違い、突然の症状と119番を呼ぶ目安、減量による予防まで詳しく解説します。