第1701回:院長ブログ:肥満と腎臓病の関係は?太ると腎機能は悪くなる? ~高血圧・糖尿病がなくても要注意。内臓脂肪と腎臓の意外に深い関係~
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肥満というと、
糖尿病
高血圧
脂質異常症
脂肪肝
心筋梗塞
脳卒中
などを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、肥満と深く関係している臓器がもう一つあります。
それが腎臓です。
肥満では高血圧や糖尿病を発症しやすく、それらを介して腎機能が低下することがあります。
しかし、それだけではありません。
肥満そのものが腎臓に負担をかける可能性もあります。
腎臓の代表的な役割は、血液をろ過して尿をつくることです。
しかし実際には、
老廃物を排泄する
水分量を調節する
ナトリウムやカリウムなどを調節する
酸・塩基平衡を調節する
血圧調節に関与する
赤血球産生に関係する
骨・ミネラル代謝に関与する
など、多くの働きをしています。
腎機能が低下しても初期には症状がほとんどないため、血液検査と尿検査が重要です。
身体が大きくなると、腎臓にはより多くの血液が流れ、糸球体でのろ過量が増えることがあります。
この状態を**糸球体過剰濾過(glomerular hyperfiltration)**と呼びます。
短期的には腎臓がよく働いているように見えます。
しかし長期間にわたって糸球体へ高い負荷がかかると、腎障害につながる可能性があります。
ここは重要です。
肥満や糖尿病の比較的早い段階では、過剰濾過によって腎臓が必要以上に働いていることがあります。
そのため、
eGFRが低くない=腎臓にまったく問題がない
とは限りません。
腎臓は、
eGFRだけでなく尿蛋白・尿アルブミンなどと合わせて評価する
ことが重要です。
高度な肥満などを背景として腎臓に障害が起こる病態があり、一般に**肥満関連腎症(obesity-related glomerulopathy:ORG)**と呼ばれます。
肥満に伴う、
糸球体過剰濾過
糸球体内圧の上昇
糸球体の肥大
代謝異常
RAASなどの神経体液性因子
が関係すると考えられています。
進行すると蛋白尿や腎機能低下につながることがあります。
腎臓には非常に細い血管が集まっています。
高血圧が長期間続けば、その血管や糸球体に負担がかかります。
一方、腎機能が悪化すると血圧が上がりやすくなることもあります。
つまり、
高血圧 → 腎障害 → さらに高血圧
という悪循環が起こることがあります。
肥満+高血圧では、血圧管理が非常に重要です。
糖尿病は慢性腎臓病の重要な原因の一つです。
糖尿病では、
高血糖
糸球体内圧の変化
代謝異常
炎症など
が複雑に関係し、腎臓が障害されることがあります。
糖尿病の患者さんでは、血清クレアチニンやeGFRだけではなく、尿アルブミンの確認が重要です。
尿蛋白検査は、尿中に蛋白が出ていないかを調べる検査です。
一方、尿アルブミン検査では、その中でもアルブミンをより詳しく評価します。
特に糖尿病などでは、通常の尿蛋白検査で明らかな異常が出る前から尿アルブミンが増加することがあります。
そのため、
「尿蛋白が陰性だから腎臓は絶対に大丈夫」
とは限りません。
アルブミン尿は腎障害を示す重要な指標の一つです。
さらに、アルブミン尿は腎臓だけの問題ではありません。
心筋梗塞や脳卒中などを含む心血管リスクとも関連する重要なマーカーです。
肥満・糖尿病・高血圧などが重なっている方では、尿アルブミンを確認する意味が大きくなります。
CKDは**慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease)**のことです。
腎臓の構造や機能の異常が一定期間持続している状態を指します。
重要なのは、
CKD=eGFRが低い人だけ
ではないことです。
eGFRが比較的保たれていても、持続するアルブミン尿など腎障害を示す所見があればCKDに該当することがあります。

【図1:肥満から腎臓病へつながる仕組み― 内臓脂肪・高血圧・糖尿病→糸球体過剰濾過→アルブミン尿・CKD】
eGFRは血清クレアチニン、年齢、性別などから推算される、腎機能を表す代表的な指標です。
健診でもよく測定されています。
ただしクレアチニンは筋肉量などの影響も受けるため、eGFRはあくまで推算値です。
体格や筋肉量などによって評価が難しい場合には、必要に応じて別の指標を組み合わせることもあります。
血清クレアチニンによる評価が適切でない可能性がある場合などには、シスタチンCを用いて腎機能を評価することがあります。
特に、
筋肉量が非常に少ない
筋肉量が多い
クレアチニン値だけでは評価しにくい
などの場合には役立つことがあります。
ただし、すべての患者さんに毎回必要な検査ではありません。
慢性腎臓病が重要なのは、将来の腎不全だけが問題だからではありません。
CKDがあると、
心筋梗塞
心不全
脳卒中
などの心血管疾患リスクも高くなります。
つまり腎臓を守ることは、心臓や脳を守ることにもつながります。
肥満がある方では、適切な減量によって、
血圧
血糖
インスリン抵抗性
糸球体への負担
などが改善する可能性があります。
肥満関連腎症では、減量によって蛋白尿が減少することも報告されています。
ただし、
「体重を減らせば必ず腎機能が元通りになる」
という意味ではありません。
すでに進行した腎障害では、完全に回復しない場合もあります。
だからこそ、早い段階で肥満を改善することが重要です。
必ずしもそうとは限りません。
過剰濾過が改善すると、eGFRの数値が単純に上昇しないこともあります。
腎臓病の治療効果は、
eGFRの一回の数字だけ
で判断するのではなく、
eGFRの経過
尿蛋白・尿アルブミン
血圧
血糖
体重
などを総合して評価します。
肥満、糖尿病、高中性脂肪、脂肪肝などがある方では、糖質の摂りすぎを見直すことは重要です。
当院では肥満・メタボの方に対して、糖質制限を有力な食事療法の一つとして考えています。
特に、
甘い飲み物
お菓子
菓子パン
過剰なご飯・パン・麺類
夜食
などを見直します。
ここは非常に重要です。
糖質を減らした分を、
肉を大量に食べる
加工肉を増やす
脂身・バター・生クリームを無制限に増やす
という方法に置き換えることはおすすめしません。
特に腎機能が低下している方では、
蛋白質
カリウム
リン
塩分
総エネルギー量
などを個別に考える必要があります。
CKDの程度によって食事療法は変わるため、自己流の極端な糖質制限や高蛋白食は避けましょう。
糖尿病やCKD、心不全などでSGLT2阻害薬を使用している方が、極端な糖質制限やケトジェニック食を行うと、まれですが正常血糖ケトアシドーシスのリスクが問題になります。
薬を使用している方が大幅に食事内容を変更するときには、主治医へ相談してください。
自己判断で薬を中止することも避けましょう。
減量中に筋肉を維持するため、蛋白質は重要です。
しかし、
腎機能が正常な肥満患者さん
と、
進行したCKDがある患者さん
では、適切な蛋白質摂取の考え方が同じとは限りません。
腎機能・年齢・筋肉量・栄養状態などを見ながら個別に考えます。
肥満・メタボがある場合には、必要に応じて、
血清クレアチニン
eGFR
尿蛋白
尿アルブミン
血圧
血糖・HbA1c
脂質
電解質
などを確認します。
糖尿病・高血圧がある場合には特に重要です。
一度の異常だけでCKDと決めつけるのではなく、経過を確認することも大切です。
体重だけでなく腹囲も見ます。
家庭血圧も活用します。
糖尿病を放置しません。
eGFRだけで判断しません。
高血圧・むくみの管理にも重要です。
無理のない有酸素運動と筋力トレーニングを取り入れます。
CKDがある場合には特に個別調整が必要です。

【図2:肥満から腎臓を守る7つのポイント― 体重・血圧・血糖・尿アルブミン・eGFRをまとめて管理】
肥満・メタボの診療では、
体重だけを測って終わり
ではありません。
腎臓を守るためにも、
体重・腹囲
家庭血圧
血糖・HbA1c
脂質
クレアチニン・eGFR
尿蛋白・尿アルブミン
などを総合的に確認することが重要です。
特に、
肥満+高血圧
肥満+糖尿病
では腎臓の評価を忘れないようにします。
必要に応じて腎臓専門医へご紹介します。
肥満では、高血圧や糖尿病を介して腎臓病のリスクが高くなるだけではありません。
肥満そのものによって、
糸球体過剰濾過
糸球体内圧上昇
代謝異常
などが起こり、腎臓に負担がかかることがあります。
そのため、
「糖尿病ではないから腎臓は大丈夫」
「eGFRが低くないから大丈夫」
とは限りません。
肥満・メタボがある方では、
eGFR+尿蛋白・尿アルブミン
を含めて腎臓を評価することが重要です。
腎臓病は、初期にはほとんど症状がありません。
「むくんでいないから大丈夫」
「尿が普通に出ているから大丈夫」
とは限りません。
肥満・高血圧・糖尿病がある方は、症状がない段階から腎臓をチェックしましょう。
腎臓を守る治療は、心臓や脳を守る治療でもあります。
まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医へご紹介します。
腎臓病の評価で、
「クレアチニンだけ見ていればいい」
という考え方は十分ではありません。
特に肥満・糖尿病・高血圧がある方では、
eGFRの推移と尿蛋白・尿アルブミンをセットで見る
ことが重要です。
そして肥満治療では、
糖質を減らす=蛋白質を無制限に増やす
ではありません。
腎機能まで確認したうえで、その人に合った食事療法を選びましょう。
「肥満は本当にがんの原因になる?」
「どんな種類のがんと関係する?」
「内臓脂肪やインスリン抵抗性は、がんとどう関係する?」
次回は、肥満とがんの関連、インスリン・IGF系、慢性炎症、性ホルモン、脂肪肝を背景とした肝がんなどの仕組みと、減量・生活習慣改善による予防の考え方を詳しく解説します。