【図2:CABG手術の流れとPCIとの違い】
心臓を止めて手術するの?
CABGには大きく分けて、
人工心肺を使用して心臓を一時的に止めて行う方法
と、
心臓を動かしたまま行う方法(オフポンプCABG)
があります。
どちらを選択するかは、冠動脈の状態や全身状態、手術を行う施設・術者の判断などによって異なります。
PCIがあるのに、なぜ手術が必要なの?
「カテーテルで治療できるなら、わざわざ手術をしなくてもいいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし冠動脈の病変は、人によって大きく異なります。
たとえば、
- 複数の冠動脈に複雑な病変がある
- 左主幹部など重要な場所に病変がある
- 病変が長い、あるいは複雑
- 糖尿病を合併した多枝病変
- PCIでは十分な治療効果が期待しにくい
などの場合には、CABGが有力な選択肢となります。
PCIとCABG、どちらがいい?
これは非常に重要なポイントです。
「PCIのほうが簡単だから優れている」「CABGのほうが大きな手術だから効果が高い」という単純な比較ではありません。
PCI
カテーテルを使うため体への負担が比較的小さく、回復も早いことがメリットです。
一方、複雑な病変では治療が難しかったり、将来的に再治療が必要になったりする場合があります。
CABG
開胸手術のため体への負担は大きくなりますが、病変の状態によってはPCIより長期的な治療効果が期待できることがあります。
そのため、
「その患者さんにとって長期的にどちらが有利か」
を考えて治療法を選びます。
「ハートチーム」で治療法を決めることも
PCIとCABGのどちらが適しているか判断が難しい複雑な冠動脈疾患では、循環器内科医だけで治療方針を決めるとは限りません。
循環器内科医、心臓血管外科医などが連携するハートチームで検討し、患者さんの希望も踏まえて治療法を決定することがあります。
冠動脈の状態だけでなく、
- 年齢
- 心臓の機能
- 糖尿病
- 腎機能
- 他の病気
- 手術リスク
- 生活背景
なども考慮されます。
CABGを受ければ動脈硬化は治る?
いいえ。
ここはPCIと同じです。
CABGは血流を改善する非常に重要な治療ですが、動脈硬化そのものをなくす治療ではありません。
また、バイパスに使用した血管も永久に問題が起こらないとは限りません。
そのため手術後も、
- LDLコレステロールの管理
- 血圧管理
- 糖尿病の管理
- 禁煙
- 適切な運動
- 体重管理
- 処方された薬の継続
が重要になります。
手術後は心臓リハビリも重要
CABG後は、状態に合わせて少しずつ身体活動を増やしていきます。
そこで重要になるのが**心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)**です。
単に歩く練習をするだけではありません。
運動療法に加えて、食事、禁煙、服薬、血圧・脂質・糖尿病などの危険因子を総合的に管理し、再発を防ぎながら社会生活への復帰を目指します。
当院の考え方
冠動脈疾患の治療では、「狭いところをどう治すか」だけを見るのでは不十分です。
薬物治療、PCI、CABGにはそれぞれ役割があります。
病変の場所や複雑さ、心機能、糖尿病などを総合的に考え、その患者さんにとって最も適した治療を選択することが重要です。
当院では必要に応じて専門医療機関と連携し、適切な治療へつなげます。
まとめ
✅ CABGは狭窄部を迂回して新しい血流ルートを作る手術
✅ 内胸動脈・橈骨動脈・大伏在静脈などを使用する
✅ 複雑な多枝病変などではCABGが適している場合がある
✅ PCIとCABGは単純に優劣をつける治療ではない
✅ CABG後も動脈硬化の再発予防が非常に重要
当院からのメッセージ
「ステントではなくバイパス手術が必要です」と言われると、大きな不安を感じる方もいらっしゃいます。
しかしCABGが勧められるのには、冠動脈の状態や将来の心血管イベントまで考えた理由があります。
なぜPCIではなくCABGなのかを十分に理解し、納得して治療を受けることが大切です。
院長のワンポイントアドバイス
PCIとCABGは「どちらが上か」ではなく、「どちらがその患者さんに適しているか」で選びます。
特に複雑な冠動脈病変では、目の前の狭窄を治すだけでなく、数年先まで考えて治療法を選択することが重要です。
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