第1703回:院長ブログ:肥満は認知症のリスクになる?中年期の肥満と脳の老化の関係 ~「今の体重」が将来の脳に影響する?高血圧・糖尿病・脳血管障害・睡眠時無呼吸から考える~
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肥満というと、
糖尿病
高血圧
脂質異常症
心筋梗塞
脳卒中
などとの関係がよく知られています。
しかし近年、もう一つ重要視されているのが認知症との関係です。
特に注目されているのが、
中年期の肥満
です。
中年期の肥満は、その後の認知症リスク上昇と関連することが多くの研究で示されています。
ただし、
「太っている=将来必ず認知症になる」
という意味ではありません。
認知症は高齢になって突然始まる病気ではありません。
アルツハイマー病などでは、症状が出るかなり前から脳内の変化が始まっていると考えられています。
そのため認知症予防は、
「高齢になってから考えるもの」
ではありません。
40代・50代を含む中年期から、
体重
血圧
血糖
脂質
運動
喫煙
睡眠
などを適切に管理することが、将来の脳の健康を考えるうえで重要です。
肥満、とくに内臓脂肪型肥満では、
インスリン抵抗性
慢性炎症
高血圧
糖尿病
脂質異常症
睡眠時無呼吸
などが起こりやすくなります。
これらはそれぞれ脳血管や脳機能に影響する可能性があります。
つまり、
肥満そのものの影響+肥満から起こる病気の影響
を合わせて考える必要があります。
中年期から高血圧が長期間続くことは、将来の認知症リスクを考えるうえで重要です。
高血圧は、
脳梗塞
脳出血
脳小血管病
などのリスクを高めます。
明らかな脳卒中を起こしていなくても、脳の細い血管への障害が積み重なることがあります。
そのため肥満の方では、体重だけでなく家庭血圧を確認することが重要です。
糖尿病も認知症リスクと関連しています。
その背景には、
動脈硬化
脳血管障害
インスリン抵抗性
炎症
腎機能障害
など、複数の要因が関係すると考えられています。
糖尿病では血管性認知症だけでなく、アルツハイマー型認知症との関連も報告されています。
したがって、
「HbA1cだけ下げれば脳は大丈夫」
ではありません。
血圧・脂質・運動・喫煙なども含めて管理することが大切です。
前回までの記事で解説したように、肥満は、
高血圧
糖尿病
脂質異常症
心房細動
などを介して脳卒中リスクと関連します。
脳梗塞や脳出血によって脳組織が障害されれば、その後の認知機能にも影響することがあります。
さらに、小さな脳梗塞や脳小血管病が積み重なることで、認知機能低下につながる場合もあります。
認知症というとアルツハイマー型認知症を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし、脳血管障害に関連して起こる血管性認知症もあります。
さらに実際の高齢者では、
アルツハイマー病の病理+脳血管障害
が同時に存在することもあります。
だからこそ、脳の血管を守ることは認知症予防を考えるうえでも重要です。
内臓脂肪が増えると、脂肪組織では慢性的な低度炎症が起こります。
炎症性サイトカインやアディポカインの変化などを介して、全身の代謝に影響します。
こうした慢性炎症や代謝異常と認知機能低下との関係についても研究が進められています。
ただし、
「内臓脂肪の炎症が直接アルツハイマー病を起こす」
と単純化することはできません。
肥満の方で見逃したくないのが、**閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)**です。
睡眠中に無呼吸・低呼吸を繰り返すと、
間欠的低酸素
睡眠の分断
交感神経活性化
などが起こります。
OSAは高血圧、心房細動、脳卒中などとも関連し、認知機能との関連についても研究されています。
肥満があり、
大きないびき
睡眠中の無呼吸
日中の眠気
朝の頭痛
などがある場合には、睡眠時無呼吸の評価を検討します。
肥満の背景には、身体活動量の低下が隠れていることがあります。
身体活動は、
体重
血圧
血糖
心肺機能
筋肉量
だけでなく、脳の健康を考えるうえでも重要です。
したがって認知症予防では、
「痩せるために運動する」
だけではなく、
「将来の身体と脳を守るために身体を動かす」
という視点が大切です。
内臓脂肪の増加
↓
高血圧・糖尿病・脂質異常症
+
慢性炎症・インスリン抵抗性
+
睡眠時無呼吸・運動不足
↓
動脈硬化・脳小血管病・脳卒中など
↓
認知機能低下・認知症リスクの上昇
という複数の経路が考えられます。
【図1:中年期の肥満から認知症リスクへ― 内臓脂肪・高血圧・糖尿病・脳血管障害・睡眠時無呼吸のつながり】
肥満と認知症の関係は、脳卒中だけでは説明できません。
中年期の肥満や糖尿病は、アルツハイマー型認知症のリスクとも関連することが報告されています。
ただし、アルツハイマー病は非常に複雑な疾患です。
遺伝
加齢
生活習慣
血管因子
代謝因子
などが複雑に関係します。
「肥満がアルツハイマー病の直接的な原因」と断定するのは適切ではありません。
研究によっては、高齢期のBMIが低い人で認知症が多いように見えることがあります。
ここには注意が必要です。
認知症の発症前には、
食欲の変化
嗅覚の変化
生活行動の変化
代謝の変化
などによって、診断より前から体重が減少する場合があります。
つまり、
痩せたから認知症になった
のではなく、
認知症につながる変化が始まっていたため痩せてきた
という「逆因果」の可能性があります。
中年期の肥満改善は重要ですが、高齢者では考え方が変わります。
高齢者が極端な減量をすると、
筋肉量低下
サルコペニア
フレイル
転倒
骨折
低栄養
などにつながる可能性があります。
そのため、
50歳の肥満患者さん
と、
85歳で体重が減少している患者さん
に同じダイエットをすすめることはありません。
年齢・体格・筋肉量・病気・栄養状態を見て個別に考える必要があります。
ここも慎重に考える必要があります。
肥満を改善すると、
血圧
血糖
脂質
睡眠時無呼吸
身体活動
などが改善する可能性があります。
これらは脳血管疾患や認知症リスクを考えるうえで重要です。
しかし、
「何kg痩せれば認知症にならない」
という基準はありません。
減量は、認知症予防を考えるうえでの総合的なリスク低減策の一つです。
将来の認知症リスクを減らすために、
このサプリを飲む
この食品だけを食べる
この脳トレだけをする
といった単一の方法に頼るのはおすすめできません。
重要なのは、
血圧
血糖
脂質
肥満
運動
喫煙
飲酒
睡眠
社会的活動
聴力
など、複数の修正可能な要因を長期的に管理することです。
肥満・メタボを改善するためには、
甘い飲み物
お菓子
菓子パン
ご飯・パン・麺類の過剰摂取
夜食
などを見直します。
当院では肥満・メタボの方に対して、糖質制限を有力な食事療法の一つとして考えています。
糖質摂取を適切に減らし、内臓脂肪・血糖・中性脂肪などの改善を目指します。
「糖質を食べなければアルツハイマー病を防げる」
といった単純な結論を支持する十分な根拠はありません。
糖質制限の目的は、
肥満
高血糖
高中性脂肪
脂肪肝
などの代謝異常を改善することです。
認知症予防は、食事だけでなく運動・血圧・睡眠・禁煙などを含めて考える必要があります。
果物にはビタミンや食物繊維などが含まれますが、果糖などの糖質も含まれます。
肥満・糖尿病・高中性脂肪・脂肪肝がある方に、
「脳にいいから果物をたくさん食べましょう」
と一律にすすめる必要はありません。
特に、
果汁ジュース
スムージー
ドライフルーツ
などは糖質を摂取しやすいため注意します。
減量では体重だけを見ないことが重要です。
特に中年期以降では、
脂肪を減らしながら筋肉を維持する
ことを意識します。
ウォーキングなどの有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせ、身体活動を習慣化しましょう。
体重だけでなく腹囲も確認します。
中年期から家庭血圧を確認します。
糖尿病を放置しません。
身体活動と筋肉を維持します。
肥満+いびきがあれば評価します。
脳血管を守るためにも重要です。
年齢・筋肉量・栄養状態に合わせます。
【図2:将来の脳を守る7つの習慣― 体重・血圧・血糖・運動・睡眠を中年期から管理】
認知症予防は、
「認知症が心配になった70代から始める」
だけではありません。
中年期から、
内臓脂肪を減らす
血圧を管理する
糖尿病を管理する
脂質を管理する
運動する
禁煙する
睡眠時無呼吸を治療する
ことが、将来の脳を守るための重要な土台になります。
肥満治療の目的は、
体重計の数字を小さくすることだけではありません。
10年、20年先の心臓・脳・腎臓を守ることまで考えて治療することが大切です。
肥満、とくに中年期の肥満は、その後の認知症リスク上昇と関連しています。
背景には、
高血圧
糖尿病
脂質異常症
脳血管障害
慢性炎症
インスリン抵抗性
睡眠時無呼吸
運動不足
など、複数の要因が関係すると考えられています。
しかし、
肥満=認知症になる
ではありません。
反対に、
痩せていれば認知症にならない
わけでもありません。
大切なのは、中年期から修正できる危険因子を一つずつ減らしていくことです。
認知症は、症状が出てからだけ考える病気ではありません。
40代・50代の、
体重
腹囲
血圧
血糖
運動
睡眠
喫煙
といった日々の積み重ねが、将来の脳の健康と無関係ではありません。
「最近太ってきた」
「血圧も血糖も少し高い」
「いびきがひどい」
という段階から対策を始めることが重要です。
まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
認知症予防というと、脳トレやサプリメントに目が向きがちです。
しかし中年期ではまず、
血圧を測る
血糖を確認する
内臓脂肪を減らす
身体を動かす
タバコをやめる
睡眠時無呼吸を見逃さない
といった基本的な対策を大切にしましょう。
「将来の脳を守るために、今メタボを治療する」
という視点が重要です。
「肥満は薬で治療する時代になった?」
「GLP-1受容体作動薬とは?」
「糖尿病の薬をダイエット目的で使っていい?」
「薬を使えば食事や運動はいらない?」
次回は、肥満症と単なる肥満の違い、薬物治療の位置づけ、GLP-1受容体作動薬などの作用・適応・注意点、自由診療の“痩せ薬”との違い、食事・運動療法を続ける意味まで詳しく解説します。