第1709回:院長ブログ:朝だけ血圧が高い「早朝高血圧」とは?脳卒中・心臓病との関係 ~病院では正常でも安心できない。「朝の家庭血圧」から見える高血圧があります~
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今回はJSH2025を基本に、日本高血圧学会が現在重点的に進めている「早朝高血圧徹底制圧」の考え方と最新研究を踏まえて解説します。日本高血圧学会は、家庭血圧、とくに朝の血圧管理を現在の高血圧診療における重要課題と位置づけています。
診療していると、このような患者さんは珍しくありません。
病院では血圧が正常だから、
「高血圧ではないから大丈夫」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、
というタイプの高血圧があります。
これが早朝高血圧です。
血圧は一日中同じではありません。
睡眠中から起床にかけて、
自律神経
ホルモン
血管の収縮
心拍数
身体活動
などが変化し、通常でも朝に向かって血圧は上昇します。
問題は、その上昇が大きすぎたり、もともとの血圧が高い状態と重なったりする場合です。
日本高血圧学会は2025年に**「早朝高血圧徹底制圧宣言」**を発表し、朝の家庭血圧管理を強く推進しています。2026年にも関連啓発を継続しており、早朝高血圧は現在の日本の高血圧診療で特に重視されているテーマです。
背景には、治療中であっても朝の血圧が十分に管理されていない患者さんが少なくないという問題があります。
朝の血圧が高くなる背景は一つではありません。
大きく考えると、
夜になっても血圧が十分に下がらず、そのまま朝も高いタイプです。
睡眠中はそれほど高くなくても、起床前後に血圧が大きく上昇します。
実際には両方の要素が重なっていることもあります。
早朝高血圧の大きな問題がこれです。
診察を受けるのは多くの場合、
朝起きてすぐではありません。
病院に到着するころには血圧が下がっている場合もあります。
そのため、
診察室血圧だけでは朝の高血圧を見逃す可能性があります。
家庭血圧が重要なのはこのためです。
家庭血圧は診察室血圧とは独立して心血管リスクに関係し、高血圧診療における重要な測定法です。

【図1:早朝高血圧とは?― 夜から朝にかけての血圧変化と2つのタイプ】
ここは少し注意が必要です。
前回まで説明したように、JSH2025における高血圧患者の原則的な家庭血圧の降圧目標は、
です。
一方、日本高血圧学会の「血圧朝活」では、国民への分かりやすい啓発メッセージとして、
「朝の血圧130 mmHg未満を目指そう」
という目標も掲げています。
ここは非常に大切です。
125/75 mmHg未満は、JSH2025で示された高血圧患者の原則的な家庭血圧の降圧目標です。
一方の朝の収縮期血圧130 mmHg未満は、日本高血圧学会が早朝高血圧対策を社会に広げるために掲げている啓発上のメッセージです。
したがって、
「130未満なら125/75を目指さなくてよい」
という意味ではありません。
数字が何を意味しているのかを区別することが重要です。
高血圧は、
脳卒中
心筋梗塞
心不全
腎臓病
大動脈疾患
などの重要な危険因子です。
さらに日本高血圧学会の早朝高血圧プロジェクトでは、脳卒中、心筋梗塞、心不全、大動脈解離などの主要な心血管イベントが早朝に起こりやすいことも、朝の血圧管理を重視する背景として挙げられています。
だからといって、
「朝に血圧が高ければ必ず脳卒中になる」
という意味ではありません。
大切なのは、朝の血圧を心血管リスク評価の重要な情報として捉えることです。
おすすめできません。
診察室血圧が正常でも、家庭血圧が高ければ仮面高血圧に該当する可能性があります。
特に、
病院では正常
朝の家庭血圧では高い
という場合には、診察室血圧だけで「コントロール良好」と判断しないことが重要です。
原因は一つではありません。
代表的には、
睡眠時無呼吸
肥満
飲酒
喫煙
睡眠不足
寒さ
塩分過多
糖尿病
腎臓病
自律神経の変化
降圧薬の効果が翌朝まで十分持続していない
などを考えます。
早朝高血圧の患者さんで重要なのが、
です。
睡眠中に無呼吸や低呼吸を繰り返すと、
低酸素
覚醒反応
交感神経活性化
などが繰り返され、夜間から早朝の血圧に影響することがあります。
早朝高血圧に加えて、
大きないびき
家族から無呼吸を指摘された
日中の眠気
朝の頭痛
夜間頻尿
肥満
などがあれば、睡眠時無呼吸の可能性も考えます。
必要に応じて睡眠検査を検討します。
肥満、特に内臓脂肪型肥満では、
交感神経
インスリン抵抗性
腎臓でのナトリウム処理
RAAS
睡眠時無呼吸
など複数の経路を介して血圧が上がりやすくなります。
したがって肥満を伴う早朝高血圧では、
血圧だけでなく体重・腹囲も同時に管理する
ことが重要です。
肥満・メタボを伴う患者さんでは、糖質の摂りすぎを見直すことは一つの有力な選択肢です。
適切な糖質制限によって、
体重
内臓脂肪
血糖
中性脂肪
などが改善すれば、結果として血圧改善にもつながる可能性があります。
ただし、
「糖質を食べたから直接早朝高血圧になる」
という単純な話ではありません。
また、糖質制限をしているから塩分や脂質を無制限に摂ってよいわけでもありません。
飲酒習慣も確認します。
特に、
毎晩飲酒する
一度に多量に飲む
飲酒によって睡眠の質が悪化する
といった場合には、夜間から朝の血圧に影響する可能性があります。
「夜のお酒だから朝の血圧とは関係ない」とは限りません。
高血圧対策では減塩が基本です。
注意したいのは、
ラーメン・うどんなどの汁
味噌汁
漬物
加工肉
練り製品
惣菜
外食
調味料
などです。
「自分では塩を振っていない」だけでは、摂取量が少ないとは限りません。
血管は寒さによって収縮し、血圧が上がりやすくなります。
日本高血圧学会も2025年末、冬季の朝の血圧管理について注意喚起を行っています。
特に、
暖かい布団から急に寒い部屋へ移動する
といった急激な温度変化には注意しましょう。
これは非常に重要です。
「薬を飲んでいるから高血圧は治療できている」
とは限りません。
たとえば、
診察室 120台
夕方 120台
朝 140台
という患者さんでは、朝の血圧まで十分に管理できていない可能性があります。
降圧薬にはさまざまな種類があります。
薬の種類、投与量、組み合わせ、服薬状況などによっては、次の服薬前の朝に血圧が上昇する場合があります。
このため、
が非常に有用なのです。
ただし、
「朝高いから夜に薬を飲もう」
などと自己判断で服薬時間を変更してはいけません。
必ずしもそうではありません。
まず、
家庭血圧の測定方法は正しいか
薬をきちんと服用しているか
塩分は多くないか
飲酒はどうか
睡眠時無呼吸はないか
肥満はないか
腎臓病など二次性高血圧の要因はないか
などを確認します。
そのうえで必要なら薬物療法を調整します。
最も現実的なのは、
です。
前回説明したように、
起床後1時間以内
排尿後
朝食前
朝の降圧薬服用前
座って安静にしてから
という条件をできるだけそろえます。
そして複数日にわたって記録します。
2025年に発表された14のRCTを含む更新メタ解析では、診察室血圧だけではなく家庭血圧に基づいて治療を行うことが、より良好な血圧コントロールにつながることが示されました。一方、心血管イベントそのものを比較したRCTは確認されておらず、そこまで直接証明されたと表現するのは適切ではありません。
このように、家庭血圧は単なる記録ではなく、治療方針を考える重要な情報です。

【図2:朝の血圧が高いときのチェックリスト― 睡眠時無呼吸・肥満・塩分・飲酒・薬を確認】
まず確認したいのは、
① 正しい方法で家庭血圧を測る
② 数日間の朝の血圧を記録する
③ 夜の血圧とも比較する
④ 体重・腹囲を確認する
⑤ 塩分・飲酒を見直す
⑥ いびき・無呼吸を確認する
⑦ 薬を自己判断で変更しない
⑧ 記録を持って医療機関へ相談する
という流れです。
早朝高血圧そのものと高血圧緊急症は別です。
一回高い数字が出たというだけで、直ちに救急車が必要とは限りません。
ただし、
突然の麻痺
ろれつが回らない
意識障害
激しい胸痛
強い息苦しさ
突然の激しい頭痛
などを伴う場合には、脳卒中・急性冠症候群・大動脈疾患などの可能性があります。
この場合は119番を利用してください。
早朝高血圧で大切なのは、
です。
家庭血圧、とくに朝の血圧を確認し、
肥満
糖尿病
脂質異常症
腎臓病
睡眠時無呼吸
飲酒
喫煙
塩分
服薬状況
まで含めて総合的に評価します。
必要であれば、生活習慣改善、降圧薬の調整、睡眠時無呼吸の検査、二次性高血圧の検索などを検討します。
早朝高血圧とは、
朝の家庭血圧が高い状態
です。
問題なのは、診察室では正常でも朝だけ高い患者さんが存在することです。
そして高血圧は脳卒中・心筋梗塞・心不全・腎臓病などの重要な危険因子です。
だからこそ、
ことが重要です。
JSH2025では高血圧患者の家庭血圧の原則的な降圧目標は125/75 mmHg未満です。一方、日本高血圧学会は早朝高血圧対策の啓発として朝の収縮期血圧130 mmHg未満という分かりやすいメッセージも掲げています。両者の意味を区別して理解しましょう。
診察室で血圧が正常でも、
「朝、自宅では高い」
という方はぜひ家庭血圧の記録をお持ちください。
高血圧治療の目的は、一回の診察室血圧を正常にすることではありません。
24時間を通して血圧による臓器への負担を減らし、将来の脳・心臓・腎臓を守ることが大切です。
まずは内科クリニックへご相談ください。必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
降圧薬を飲んでいる方ほど、
「病院で正常だから薬が効いている」
だけで判断しないことが重要です。
ぜひ朝、薬を飲む前の家庭血圧を確認してください。
そこに、診察室では見えない高血圧が隠れていることがあります。
「家では120台なのに、病院に来ると150を超える」。
次回は、白衣高血圧は本当に治療不要なのか、将来の持続性高血圧や心血管リスクとの関係、家庭血圧・24時間血圧測定をどう使い分けるのかを、JSH2025と最新エビデンスに沿って解説します。