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第1662回:院長ブログ:ステント治療後の抗血小板薬とは? ~なぜ「血液をサラサラにする薬」が必要?DAPTと薬をやめる時期を解説~

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第1662回:院長ブログ:ステント治療後の抗血小板薬とは? ~なぜ「血液をサラサラにする薬」が必要?DAPTと薬をやめる時期を解説~

この記事でわかること

✅ ステント後になぜ抗血小板薬が必要なのか

✅ DAPTとは何か

✅ 抗血小板薬はいつまで飲むのか

✅ 手術や内視鏡の前に勝手に中止してはいけない理由


ステント治療後、なぜ薬が必要なの?

PCI(冠動脈インターベンション)では、狭くなった冠動脈をバルーンで広げ、必要に応じてステントという金属製の網目状の筒を留置します。

ステントによって血流は改善しますが、治療直後のステントは血液にとって「異物」です。

その表面に血小板が集まって血栓ができると、せっかく広げた冠動脈が突然詰まってしまうことがあります。

これがステント血栓症です。

ステント血栓症は心筋梗塞などにつながる重大な合併症であるため、それを予防する目的で抗血小板薬を使用します。

 

 

 

 

 

 

【図1:ステント留置後に抗血小板薬が必要な理由】


「血液サラサラの薬」とは?

患者さんからよく聞く「血液サラサラの薬」は、医学的には一種類ではありません。

大きく、

抗血小板薬

抗凝固薬

があります。

冠動脈ステント後に中心となるのは抗血小板薬です。

血小板が集まって血栓を作る働きを抑えます。

代表的な薬には、

  • アスピリン
  • クロピドグレル
  • プラスグレル

などがあります。

一方、心房細動などで使用されるDOACやワルファリンは抗凝固薬で、作用する仕組みが異なります。


DAPTとは?

PCI後によく行われるのが、

DAPT(Dual Antiplatelet Therapy:抗血小板薬2剤併用療法)

です。

一般的には、

アスピリン + P2Y12受容体阻害薬

という2種類の抗血小板薬を組み合わせます。

P2Y12受容体阻害薬にはクロピドグレルやプラスグレルなどがあります。

2つの異なる仕組みで血小板の働きを抑えることで、ステント血栓症などの虚血性イベントを予防します。


DAPTはいつまで続けるの?

ここは非常に重要です。

「ステントを入れたら全員○か月」ではありません。

DAPTの期間は、

  • 安定した冠動脈疾患か
  • 急性冠症候群・心筋梗塞か
  • 使用したステント
  • PCIの複雑さ
  • 再び血栓ができるリスク
  • 出血リスク
  • 年齢
  • 腎機能
  • 他に使用している薬

などを考えて決めます。

現在はステントの進歩に加え、「血栓を防ぐメリット」と「出血を増やすデメリット」のバランスを患者さんごとに評価して、DAPT期間を個別化することが重要になっています。


長く飲めば飲むほど安心?

そうとは限りません。

抗血小板薬を増やしたり長期間使用したりすれば、血栓を防ぐ効果が期待できる一方で、出血のリスクは高くなります。

たとえば、

  • 鼻血
  • 皮下出血
  • 消化管出血
  • 血尿
  • 頭蓋内出血

などが問題になることがあります。

したがって、

「短ければよい」「長ければよい」ではなく、その人に適切な期間を選ぶ

ことが大切です。

 

 

 

 

 

 

【図2:DAPTの期間を決める考え方 ― 血栓リスクと出血リスクのバランス】


自己判断で中止するのは危険

抗血小板薬を飲んでいると、

「青あざが増えた」

「歯科治療がある」

「内視鏡検査を受ける」

などの理由で薬を止めたくなることがあります。

しかし、ステント治療後の抗血小板薬を自己判断で中止してはいけません。

特にPCI後の一定期間は、抗血小板薬の中断によってステント血栓症のリスクが高まる可能性があります。

中止が必要かどうかは、

PCIを行った循環器医と、手術・処置を行う医師が連携して判断する

ことが重要です。


大腸内視鏡や手術を受けるときは?

「血液サラサラの薬を飲んでいるので、検査前から全部止めてください」

という単純な判断は適切ではありません。

たとえば大腸内視鏡でも、

  • 観察だけなのか
  • 生検をするのか
  • ポリープを切除するのか
  • どのような切除方法なのか

によって出血リスクが異なります。

一方で、ステント留置からの期間や冠動脈疾患の状態によっては、抗血小板薬を中止すること自体が危険な場合があります。

そのため、処置による出血リスクと薬を中止した場合の血栓リスクの両方を評価します。


心房細動もある場合は?

冠動脈ステントを入れた患者さんが、心房細動も合併していることがあります。

この場合、

抗血小板薬 + 抗凝固薬

が必要になるケースがあります。

しかし薬を組み合わせるほど出血リスクも高くなるため、現在は必要以上に多剤併用を長く続けないよう、治療内容や期間を慎重に決めます。

これは患者さんごとの判断が特に重要な領域です。


出血したらどうする?

抗血小板薬を服用している方で、

  • 黒い便が出る
  • 血便が続く
  • 吐血する
  • 血尿が続く
  • 出血がなかなか止まらない
  • 強い頭痛や意識の異常がある

といった場合には、医療機関への相談・受診が必要です。

ただし、出血が心配だからといって、まず薬を自己判断で中止するのではなく、緊急性に応じて医療機関へ相談することが大切です。


ステントを入れたことを他の医師に伝えましょう

歯科治療、内視鏡検査、手術などを受ける際には、

「冠動脈ステントが入っています」

と必ず伝えてください。

できれば、

  • PCIを受けた時期
  • ステントを入れた理由
  • 現在飲んでいる抗血小板薬
  • 抗凝固薬の有無

がわかるようにしておくと安心です。

お薬手帳も非常に役立ちます。


当院の考え方

PCI後の薬物治療では、ステント血栓症を防ぐことと、重大な出血を防ぐことの両方を考える必要があります。

特に手術や内視鏡検査の前には、「血液サラサラの薬だから中止」という一律の対応ではなく、PCIの時期や冠動脈疾患の状態、予定される処置の出血リスクを確認することが重要です。

必要に応じてPCIを行った循環器専門医や処置を担当する医師と連携して判断します。


まとめ

✅ ステント後の抗血小板薬はステント血栓症を防ぐために重要

✅ DAPTは2種類の抗血小板薬を併用する治療

✅ DAPTの期間は患者さんごとに異なる

✅ 長期間使用すれば必ず良いわけではなく、出血リスクとのバランスが重要

✅ 手術・内視鏡・歯科治療の前でも自己判断で中止しない


当院からのメッセージ

ステント治療が終わっても、その後の薬まで含めてPCI治療と考えることが大切です。

特に抗血小板薬は、「いつまで飲むのか」「検査や手術の前にどうするのか」が患者さんによって異なります。

わからない場合は自己判断せず、医師へ確認してください。


院長のワンポイントアドバイス

「血液サラサラの薬を飲んでいる」だけでは情報が足りません。

抗血小板薬なのか抗凝固薬なのか、何の病気のために飲んでいるのかによって、中止した場合のリスクは大きく異なります。

受診時には薬の名前と、冠動脈ステントを入れた時期を伝えられるようにしておくことをおすすめします。


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