第1685回:院長ブログ:糖質制限で何を食べる?肉・魚・卵・大豆製品の上手な選び方 ~糖質を減らしたら「タンパク質をどう確保するか」が重要です~
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前回は、肥満・メタボ対策としての糖質制限について解説しました。
そこで次に出てくるのが、
「ご飯を減らしたら、お腹が空きませんか?」
「肉なら好きなだけ食べていいですか?」
「卵は毎日食べても大丈夫?」
「タンパク質を増やすと腎臓に悪いと聞いたのですが……」
という疑問です。
糖質制限で重要なのは、単に
「ご飯・パン・麺を食べない」
ことではありません。
むしろ重要なのは、
「糖質を減らした代わりに、何を食べるのか」
です。
その中心となる栄養素の一つが、タンパク質です。
体重を減らすときに、減らしたいのは主に余分な体脂肪です。
ところが減量中には、体脂肪だけでなく筋肉などの除脂肪組織も減る可能性があります。
筋肉が減りすぎれば、
体力が落ちる
活動量が減る
将来的なフレイルやサルコペニアにつながる
といった問題が生じます。
したがって肥満治療では、
「体重を落とす」だけではなく、「筋肉をできるだけ維持しながら体脂肪を減らす」
ことが重要です。
そのために、適切なタンパク質摂取と運動が大切になります。
タンパク質を適切に含む食事は、食後の満足感を得るうえでも役立ちます。
たとえば、
パンだけ
おにぎりだけ
麺だけ
という食事と、
肉・魚・卵・豆腐などを組み合わせた食事では、食事内容が大きく違います。
糖質を減らすときには、単純に主食を抜いて食事量そのものを極端に減らすのではなく、タンパク質を含む食品をきちんと確保することがポイントです。

【図1:糖質を減らしたら何を食べる?― 肉・魚・卵・大豆製品の特徴を比較】
肉類は良質なタンパク質を摂取しやすく、鉄、亜鉛、ビタミンB群なども含まれます。
糖質も基本的に少ないため、糖質制限では利用しやすい食品です。
ただし、
「肉は低糖質だから、いくら食べても大丈夫」
ではありません。
特に脂身の多い肉を大量に食べれば、摂取エネルギーは増えます。
糖質制限を始めて、
ご飯を減らした
↓
その代わりに脂身の多い肉やチーズを大量に食べる
↓
総摂取エネルギーが増える
となれば、思ったように体重が減らないことがあります。
同じ肉でも部位によって脂質量はかなり違います。
たとえば、
赤身肉
鶏むね肉
鶏ささみ
などと、
脂身の多いバラ肉
では、脂質量やエネルギー量が異なります。
だからといって脂身を完全に避ける必要はありません。
重要なのは、特定の部位ばかりに偏らず、目的に応じて選ぶことです。
ハム、ソーセージ、ベーコンなども、製品によっては糖質が少ないため糖質制限で利用されることがあります。
しかし、
低糖質=健康のために積極的に大量摂取すべき食品
という意味ではありません。
加工肉の多量摂取は長期的な健康リスクとの関連が報告されており、塩分の摂りすぎにもつながりやすくなります。
糖質制限では、
「糖質が少ないか」だけで食品を評価しない
ことが重要です。
魚はタンパク質源として非常に利用しやすい食品です。
さらに、青魚などにはEPA・DHAなどのn-3系多価不飽和脂肪酸が含まれています。
肥満・メタボでは、
中性脂肪が高い
脂肪肝がある
高血圧がある
糖尿病を合併している
という方も少なくありません。
そのため、タンパク源を肉だけに偏らせず、魚も取り入れることをおすすめします。
サバ、イワシ、サンマ、サケなどは脂質を含みます。
しかし、脂質はすべて同じではありません。
魚に含まれる脂質と、脂身の多い肉や加工食品に含まれる脂質では、脂肪酸の構成が異なります。
したがって、
「脂質=すべて悪い」
という考え方は適切ではありません。
糖質制限では、糖質だけでなく脂質の質にも目を向けましょう。
卵は、
タンパク質
脂質
ビタミン
ミネラル
などを含み、調理もしやすいため、糖質制限では非常に使いやすい食品です。
「卵を食べるとコレステロールが上がるから避けた方がいい」
というイメージを持っている方もいます。
しかし、血中コレステロール値は食事中のコレステロールだけで決まるものではなく、体内での合成や遺伝的要因なども関係します。
したがって、
「卵はコレステロールを含むから一律に禁止」
と考える必要はありません。
ここも「無制限」ではありません。
卵だけを大量に食べる必要はありませんし、タンパク源を卵だけに偏らせる理由もありません。
また、LDLコレステロールが非常に高い方や家族性高コレステロール血症などでは、食生活全体を含めて個別に評価する必要があります。
大切なのは、
肉・魚・卵・大豆製品などを組み合わせること
です。
豆腐、納豆、無調整豆乳などの大豆製品も、タンパク質源として利用できます。
糖質制限では、
肉
魚
卵
に偏りがちですが、大豆製品を組み合わせることで食事のバリエーションが広がります。
たとえば、
冷奴
湯豆腐
納豆
豆腐を使った料理
などは取り入れやすいでしょう。
ここは糖質制限では重要です。
大豆と、
小豆
いんげん豆
ひよこ豆
などでは糖質量が異なります。
さらに、
甘く煮た豆
あんこ
加糖豆乳
などでは糖質が多くなります。
したがって、
「豆だから低糖質」
と一括りにはできません。
食品そのものだけでなく、調理方法や商品表示まで確認することが大切です。
必要なタンパク質量は、
年齢
体格
運動量
減量の程度
腎機能
肝機能
病気の有無
などによって異なります。
そのため、
「全員が体重1kgあたり○g食べればよい」
という単純な話ではありません。
特に肥満のある方では、現在の実体重だけを基準にして大量のタンパク質を摂ると、必要以上になる場合があります。
個人の体格や目標体重、健康状態を考えて調整する必要があります。
これは非常によく聞かれる質問です。
腎機能が正常な人と、慢性腎臓病(CKD)のある人を同じように考えてはいけません。
腎機能が保たれている健康な人が、通常の食事の範囲でタンパク質を適切に増やしたからといって、直ちに腎臓病になると考える必要はありません。
一方で、
慢性腎臓病
尿蛋白・アルブミン尿
腎機能低下
などがある方では、タンパク質摂取量を個別に調整する必要があります。
特に、
「糖質を減らした分、肉を大量に食べる」
という自己流の糖質制限はおすすめできません。
腎機能に問題がある方は、主治医と相談してください。
「タンパク質を摂るならプロテインを飲んだ方がいいですか?」
という質問もあります。
必ずしも必要ではありません。
肉・魚・卵・大豆製品などから必要量を確保できるのであれば、プロテインを追加する必要はありません。
一方、
食事量が少ない
運動量が多い
食事だけでは十分なタンパク質を確保しにくい
などの場合には、補助的に利用する選択肢があります。
ただし、プロテインも「飲めば痩せる食品」ではありません。
また商品によって糖質量が異なるため、糖質制限中は栄養成分表示を確認しましょう。
タンパク質だけを大量に摂れば筋肉が維持できるわけではありません。
筋肉を維持するためには、
適切なタンパク質摂取+筋肉への刺激
が重要です。
特に減量中には、
ウォーキングなどの有酸素運動だけでなく、スクワットなどの筋力トレーニングを組み合わせることも有効です。
肥満治療の理想は、
体重だけを落とすことではなく、筋肉を守りながら余分な体脂肪を減らすこと
です。
魚・卵・大豆製品も組み合わせます。
脂身の多い部位ばかりに偏らないようにします。
糖質量だけで食品の健康価値を判断しません。
タンパク質に加え、魚の脂質も上手に利用します。
ただし、卵だけに偏る必要もありません。
豆腐・納豆などを組み合わせ、タンパク源を多様化します。
腎機能低下や蛋白尿がある場合には、自己流で高タンパク食にしないようにします。
【図2:糖質制限中のタンパク源7か条―「肉だけ」にならない食事の作り方】
当院では肥満・メタボ対策として糖質制限を積極的な選択肢と考えていますが、
「主食を抜いて肉を好きなだけ食べる食事法」
とは考えていません。
糖質を減らしたうえで、
肉・魚・卵・大豆製品などからタンパク質を確保する。
糖質の少ない野菜・きのこ・海藻などを組み合わせる。
脂質の量と質にも配慮する。
こうした食事全体の設計が重要です。
さらに、
体重・腹囲・筋肉量・血圧・血糖・HbA1c・中性脂肪・LDLコレステロール・肝機能・腎機能
などを確認しながら、その方に合った方法に調整していきます。
肥満・メタボや糖質制限について気になる方は、まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
糖質制限では、
「糖質を減らす」ことと同じくらい、「何を食べるか」が重要です。
その中心になるのがタンパク質です。
肉は優れたタンパク源ですが、脂身の多い肉や加工肉ばかりに偏らない。
魚も取り入れる。
卵を一律に禁止する必要はない。
豆腐や納豆などの大豆製品も活用する。
そして、
肉・魚・卵・大豆製品を組み合わせる。
これが基本です。
また、糖質制限中だからといってタンパク質を無制限に摂取する必要はありません。
特に腎機能に問題がある方では注意が必要です。
目標は、
筋肉をできるだけ守りながら、余分な体脂肪を減らすこと。
そのために、タンパク質と運動を上手に組み合わせましょう。
糖質制限を始めると、
「何を食べてはいけないか」
ばかり考えてしまいがちです。
しかし、長く続けるためには、
「何なら食べられるか」
「どう組み合わせれば満足できるか」
を考えることの方が大切です。
肉だけ。
卵だけ。
豆腐だけ。
という極端な食事にする必要はありません。
さまざまなタンパク源を組み合わせ、無理なく続けられる食生活を作っていきましょう。
糖質制限中の食事を簡単にチェックするなら、
「今日、タンパク源が肉だけになっていないか?」
を確認してみてください。
魚、卵、豆腐、納豆などを組み合わせるだけでも、食事の幅が大きく広がります。
そして減量中こそ、
体重だけでなく筋肉を守る。
この視点を忘れないことが大切です。
糖質制限を始めてから、
「便が出にくくなった」
「以前より便が硬くなった」
という方は少なくありません。
次回は、なぜ糖質制限で便秘が起こることがあるのかを整理し、食物繊維、水分、野菜・きのこ・海藻、腸内環境などの視点から、糖質を増やしすぎずに便秘を予防・改善する方法を解説します。