第1707回:院長ブログ:血圧はいくつから高血圧?診察室血圧・家庭血圧の基準をわかりやすく解説 ~「140/90」と「130/80」は何が違う?診断基準と降圧目標を混同しないために~
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今回は特に混乱しやすい部分なので、日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」を基本に整理します。 JSH2025は2025年8月に発行され、2026年1月にはダイジェスト版も発行されています。
最近、
「高血圧の基準が130/80に変わった」
と思っている方がいます。
しかし、これは正確ではありません。
日本高血圧学会も現在、
であることを明確にしています。
では、なぜ「130/80」という数字をよく聞くのでしょうか。
ここで重要なのが、
高血圧の診断基準
と
高血圧と診断された人の降圧目標
は別のものだということです。
診察室で適切に測定した血圧が、
であれば、高血圧の診断基準に該当します。
「140/90以上」とは、上と下の両方が高くなければならないという意味ではありません。
たとえば、
上の血圧だけが140以上
あるいは、
下の血圧だけが90以上
でも高血圧に該当します。
ただし、血圧は変動します。
一度だけ高い数字が出たからといって、通常はその1回だけで普段の血圧状態を判断しません。
家庭で測定した血圧では、
が高血圧の基準です。
つまり、
| 測定場所 | 高血圧の基準 |
|---|---|
| 診察室血圧 | 140/90 mmHg以上 |
| 家庭血圧 | 135/85 mmHg以上 |
となります。
家庭血圧は医療機関で測る血圧とは測定環境が異なるため、同じ数字をそのまま当てはめません。
ここが今回の最重要ポイントです。
JSH2025では、高血圧患者の降圧目標について、原則として、
診察室血圧:130/80 mmHg未満
家庭血圧:125/75 mmHg未満
を目標としています。
つまり、
整理すると、
診察室 140/90 mmHg以上
家庭 135/85 mmHg以上
です。
一方、
JSH2025では原則、
診察室 130/80 mmHg未満
家庭 125/75 mmHg未満
です。
したがって、
「130/80になったら高血圧と診断されるようになった」
という説明は誤りです。

【図1:高血圧の「診断基準」と「降圧目標」は違う!― 140/90と130/80を整理】
血圧と心血管疾患の関係は、
「139なら安全、140になった瞬間から危険」
というものではありません。
血圧が上昇するにつれて、心血管リスクは連続的に増えていきます。
2024年の欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでも、血圧による心血管リスクは単純な正常/高血圧という二分法ではなく、連続的に変化するリスクとして捉えています。
だからこそ、
「高血圧と診断される数字」
と、
「治療によって目指す数字」
が同じである必要はないのです。
あります。
日本高血圧学会はJSH2025に基づく一般向け情報で、収縮期血圧を下げることによって脳卒中・心臓病などのリスクが低下すること、そして高血圧患者では適切な降圧が重要であることを示しています。
高血圧治療の目的は、
血圧計にきれいな数字を表示させること
ではありません。
目的は、
脳卒中
心筋梗塞
心不全
腎臓病
などを予防することです。
そうではありません。
JSH2025も、目標値だけを機械的に追いかけることを推奨しているわけではありません。
年齢にかかわらず原則となる降圧目標を示しつつも、
患者さん一人ひとりの状態を考慮し、有害事象や副作用に注意しながら降圧する
ことが重要とされています。
特に、
立ちくらみ
ふらつき
起立性低血圧
転倒リスク
フレイル
複数の病気や薬剤
などがある場合には、個別に考える必要があります。
年齢とともに血圧が上がりやすくなること自体は事実です。
しかし、
「高齢だから高血圧を放置してよい」
という意味ではありません。
JSH2025では、従来よりも明確に年齢だけを理由として高い血圧を容認しない方向になっています。
一方で、実際の診療では、
フレイル
転倒
起立性低血圧
腎機能
認知機能
併用薬
などを見ながら調整します。
つまり、
という考え方が重要です。
診察室の血圧だけでは、その人の普段の血圧を正確に捉えられない場合があります。
代表的なのが、
白衣高血圧
と、
仮面高血圧
です。
日本高血圧学会も、家庭血圧測定は高血圧の診断と治療の双方に役立つとしています。
病院では血圧が高いのに、
家庭では高くない
状態です。
医療機関という環境や緊張などによって血圧が上昇することがあります。
だから、
「病院で高かった=全部その人の普段の血圧」
とは限りません。
反対に、
病院では高くないのに、家庭では高い
状態です。
こちらは診察室だけで判断すると見逃される可能性があります。
「病院では正常だったから大丈夫」と思っていても、家庭血圧を測って初めて高血圧が見つかることがあります。
家庭血圧を測る大きなメリットの一つが、朝の血圧を確認できることです。
診察室では、毎朝の血圧を確認することはできません。
家庭血圧を継続することで、
朝に高いのか
夜に高いのか
一日を通して高いのか
薬を飲んでいても朝に上がっていないか
などを把握しやすくなります。
JSH2025に準拠した日本高血圧学会の資料では、朝の家庭血圧について、
起床後
排尿後
座って安静にしてから
上腕で測定
することなど、測定条件をそろえる重要性が示されています。複数回の測定結果を用いて評価します。
重要なのは、
条件をなるべく一定にして、継続して測定することです。
おすすめしません。
何度も測り続けて、
一番低かった数字だけを記録する
と、本来の血圧状態が分からなくなります。
医師に見せるために「いい数字」を作る必要はありません。
高かった日も含めて記録してください。
その情報そのものが診療に役立ちます。
血圧は毎回変わります。
昨日は高かったのに今日は低い、ということもあります。
そのため、
一回の最高値や最低値だけで一喜一憂するより、一定期間の血圧の傾向を見る
ことが重要です。
これは家庭血圧の大きな利点です。
特に、
健診で血圧が高かった
診察室ではいつも高くなる
高血圧の治療を受けている
血圧の変動が大きい
肥満・糖尿病・脂質異常症がある
腎臓病がある
睡眠時無呼吸が疑われる
といった方では、家庭血圧は非常に有用です。
ここも大切です。
高血圧の診断基準が140/90 mmHgだからといって、
139までは何のリスクもない
という意味ではありません。
血圧による心血管リスクは連続的です。
そのため、まだ高血圧と診断されない段階でも、
肥満
塩分の多い食事
運動不足
飲酒
喫煙
睡眠時無呼吸
糖尿病
脂質異常症
などがあれば、早い段階から生活習慣を見直す価値があります。
同じ血圧でも、
糖尿病がある人
LDLコレステロールが高い人
喫煙している人
腎臓病がある人
すでに心血管疾患がある人
では、将来のリスクは同じではありません。
高血圧診療では、
として評価します。

【図2:あなたの血圧はどこに当てはまる?― 診察室血圧・家庭血圧・白衣高血圧・仮面高血圧】
患者さんには、まず次の違いを理解していただきたいと思います。
診察室で高血圧を判断する数字
→ 140/90 mmHg以上
家庭で高血圧を判断する数字
→ 135/85 mmHg以上
そして高血圧患者の原則的な降圧目標は、
診察室
→ 130/80 mmHg未満
家庭
→ 125/75 mmHg未満
です。JSH2025では、この降圧目標についても個々の状態と忍容性を考慮することが明記されています。
いちかわクリニックでは、診察室で一度測った血圧だけでなく、家庭血圧を非常に重視します。
そして、
体重・腹囲
血糖・HbA1c
LDL・HDL・中性脂肪
腎機能
尿蛋白・尿アルブミン
喫煙
飲酒
睡眠時無呼吸
なども必要に応じて確認します。
高血圧を「血圧だけの病気」として扱わず、将来の脳・心臓・腎臓を守るためのリスク管理として考えることが大切です。
今回、最も覚えていただきたいのは、
ということです。
140/90 mmHg以上は診察室血圧での高血圧の診断基準。
一方、JSH2025で示された130/80 mmHg未満は、高血圧患者における原則的な診察室での降圧目標です。
そして家庭では診察室とは別の基準を使います。
ネット上で数字だけを見ると混乱しやすいので、
「これは診断基準なのか、それとも治療目標なのか」
を分けて考えることが重要です。
血圧管理の第一歩は、
「自分の普段の血圧を知ること」
です。
健診で血圧が高かった方は、家庭血圧を測って記録してみてください。
一回の数字だけで不安になったり、反対に「まだ140未満だから大丈夫」と放置したりせず、将来の心血管リスクまで含めて考えていきましょう。
まずは内科クリニックへご相談ください。必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
今回のポイントは非常にシンプルです。
「高血圧の診断基準」と「治療で目指す血圧」は別物です。
JSH2025になって「130/80以上が高血圧になった」わけではありません。
ここを正しく理解するだけでも、血圧に関する多くの誤解を防ぐことができます。
家庭血圧は、測り方が違えば数字も変わります。
次回はJSH2025に沿って、上腕式血圧計の選び方、朝・夜の測定条件、測定回数、記録方法、1回目と2回目のどちらを使うのかまで、実践的に解説します。