第1705回:院長ブログ:肥満・メタボを改善するための総まとめ―今日から始める「太らない生活」 ~体重だけを追わない。内臓脂肪を減らし、筋肉を守り、10年後・20年後の健康につなげる~
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ここまで39回にわたり、肥満・メタボについて、
BMI
内臓脂肪
食事
糖質制限
運動
睡眠
脂肪肝
糖尿病
高血圧
脂質異常症
睡眠時無呼吸
心臓病
脳卒中
腎臓病
がん
認知症
肥満症治療薬
など、さまざまな角度から解説してきました。
最終回では、それらを一つにまとめます。
最もお伝えしたいことは、
肥満治療の目的は「体重計の数字を減らすこと」ではない
ということです。
肥満、とくに内臓脂肪型肥満では、
高血圧
糖尿病
脂質異常症
脂肪肝
睡眠時無呼吸
などが重なりやすくなります。
さらに長期的には、
心筋梗塞
心不全
脳卒中
慢性腎臓病
などの重大な病気にも関係します。
したがって、
「5kg痩せた」
こと自体が最終目標ではありません。
その結果として、
腹囲が減った
血圧が改善した
血糖が改善した
中性脂肪が改善した
脂肪肝が改善した
睡眠時無呼吸が改善した
身体が動きやすくなった
という変化につなげることが重要です。
減量を始める前に、現在の状態を確認しましょう。
少なくとも、
体重
BMI
腹囲
血圧
は把握しておきたい項目です。
さらに健診や診療では、
空腹時血糖
HbA1c
中性脂肪
HDLコレステロール
LDLコレステロール
AST・ALT・γ-GTP
クレアチニン・eGFR
尿蛋白・尿アルブミン
などを必要に応じて確認します。
BMIは便利な指標ですが、身体の中身まではわかりません。
同じBMIでも、
内臓脂肪が多い人
筋肉量が多い人
皮下脂肪が多い人
では意味が違います。
そのため肥満・メタボでは、
BMI+腹囲+代謝異常
を見ることが大切です。
肥満・メタボの方では、まず普段どれくらい糖質を摂っているか確認します。
特に見直したいのが、
甘い飲み物
砂糖入りコーヒー
お菓子
菓子パン
ご飯の大盛り
パン
麺類
夜食
です。
本人は「それほど食べていない」と思っていても、糖質を積み重ねていることがあります。
肥満・メタボでは、糖質摂取を減らすことで、
食後血糖
インスリン分泌
中性脂肪
体重
内臓脂肪
などの改善につながる場合があります。
そのため当院では、糖質制限を肥満・メタボ治療の有力な食事療法の一つとして積極的に取り入れています。
ただし、
「糖質は1gでも食べてはいけない」
という意味ではありません。
ここは40回を通して繰り返しお伝えしてきた重要なポイントです。
糖質を減らした代わりに、
バター
生クリーム
脂身の多い肉
加工肉
チーズ
などを大量に摂ればよいわけではありません。
人によっては糖質制限中にLDLコレステロールが上昇することもあります。
したがって、
体重が減ったから成功
だけではなく、血液検査も確認します。
減量するときには、脂肪だけでなく筋肉も減る可能性があります。
特に中年期以降では、
「体重を減らす」+「筋肉を守る」
という二つの目標が重要です。
肉、魚、卵、大豆製品などを利用し、必要な蛋白質を確保します。
ただし慢性腎臓病などがある方では、蛋白質摂取量を個別に考える必要があります。
糖質制限を始めると、主食と一緒に食物繊維まで減ってしまい、便秘になる方がいます。
そのため、
葉物野菜
きのこ
海藻
など、比較的糖質を抑えながら食物繊維を摂れる食品を活用します。
水分摂取や身体活動も重要です。
果物にはビタミンや食物繊維などが含まれる一方、果糖を含む糖質源でもあります。
過剰な糖質・エネルギー摂取は、
体重増加
高中性脂肪
脂肪肝
血糖悪化
につながる可能性があります。
したがって肥満・メタボ、糖尿病、高中性脂肪、脂肪肝などがある方に、
「果物は健康にいいから積極的にたくさん食べましょう」
とは一律にはすすめません。
丸ごとの果物と、
果汁ジュース
スムージー
ドライフルーツ
を同じように考えないことも大切です。
液体や濃縮された形では糖質を摂取しやすくなります。
一方、丸ごとの果物をすべての人が完全に禁止する必要があるという意味でもありません。
量と代謝状態を考えて調整することが重要です。
ナッツには脂質や食物繊維などが含まれますが、種類によって栄養組成は異なります。
特にカシューナッツは、アーモンド・くるみ・マカダミアナッツなどと比較すると糖質が多めです。
また、ナッツそのものがエネルギー密度の高い食品です。
糖質制限中でも、
「ナッツならいくら食べても太らない」
とは考えないようにしましょう。
食事をあまり変えなくても、飲み物を見直すだけで糖質摂取量が大きく変わる方がいます。
特に、
清涼飲料水
スポーツドリンク
砂糖入りコーヒー
甘いカフェ飲料
果汁飲料
などを習慣的に飲んでいる場合には見直しましょう。
「飲む糖質」から減らす
のは実践しやすい方法です。
アルコールも肥満・メタボでは重要です。
飲酒によって、
食欲が増える
つまみを食べる
夜遅く食べる
中性脂肪が上がる
脂肪肝が悪化する
睡眠の質が悪化する
などが起こることがあります。
「糖質ゼロのお酒だから太らない」と単純には考えないようにしましょう。
運動というと、
「ジムに通わなければいけない」
と思う必要はありません。
まず始めやすいのがウォーキングです。
歩くことは、
エネルギー消費
血糖改善
インスリン感受性
心肺機能
気分転換
などに役立ちます。
重要なのは、一度だけ頑張ることではなく続けることです。
有酸素運動だけでなく、筋力トレーニングも重要です。
減量中に筋肉を維持することは、
身体機能
基礎的なエネルギー消費
将来のフレイル予防
などを考えるうえでも大切です。
スクワットなど、自宅でできる運動からでも構いません。
運動は非常に重要ですが、
運動したから食べても大丈夫
と考えてしまうと、消費した以上のエネルギーを簡単に摂取してしまうことがあります。
肥満治療では、
食事+運動
を組み合わせることが基本です。
睡眠不足は、食欲や体重調節と関係します。
寝不足が続けば、
食欲が乱れる
間食が増える
身体活動が減る
などにつながることがあります。
肥満治療では、食事と運動だけでなく睡眠も治療の一部と考えます。
肥満があり、
大きないびき
睡眠中の無呼吸
日中の眠気
朝の頭痛
治療しても血圧が高い
などがあれば、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。
睡眠時無呼吸は高血圧や心血管疾患などとも関係します。
必要に応じて睡眠検査を行います。
体重は、
水分
塩分
食事
排便
などによって日々変動します。
昨日より増えたから失敗、今日減ったから成功、と一喜一憂する必要はありません。
一定の条件で測定し、長期的な傾向を見ることが重要です。
体重だけでなく腹囲も記録すると、内臓脂肪の変化を把握する参考になります。
体重の減少が小さくても、
腹囲が減った
血圧が改善した
HbA1cが改善した
中性脂肪が下がった
ということがあります。
これも重要な治療成果です。
減量を続けていると、体重が減りにくくなる時期があります。
そのとき、
「もう何をやっても痩せない」
と諦める必要はありません。
まず、
間食が増えていないか
飲み物に糖質がないか
アルコールが増えていないか
運動量が減っていないか
ナッツ・チーズなどが増えていないか
睡眠不足になっていないか
を確認します。
減量後には、食欲やエネルギー代謝など身体側の変化によって体重が戻りやすくなることがあります。
したがって肥満治療は、
痩せる期間
だけではなく、
痩せた後をどう維持するか
まで含めて考える必要があります。
前回解説したように、現在は、
GLP-1受容体作動薬
GIP/GLP-1受容体作動薬
など、肥満症に対する薬物治療も進歩しています。
適切な患者さんでは、有力な治療選択肢になります。
しかし、
「注射をすれば生活習慣は何も変えなくてよい」
という治療ではありません。
肥満症治療薬によって食欲が低下しても、
栄養バランス
蛋白質
筋肉量
運動
睡眠
は重要です。
体重を減らしながら健康を悪化させては意味がありません。
肥満治療は、一つの方法だけで行うものではありません。
現在の状態を確認
↓
糖質・食事を見直す
↓
蛋白質と食物繊維を確保
↓
ウォーキング+筋トレ
↓
睡眠を整える
↓
体重・腹囲・血圧・採血を確認
↓
必要なら薬物療法
↓
長期的に維持する
という流れで考えます。

【図1:肥満・メタボ改善のロードマップ― 食事・運動・睡眠・検査・薬物療法を一つにつなげる】
肥満治療では、
体重だけ
を見るのではありません。
確認したいのは、
体重
腹囲
血圧
血糖・HbA1c
中性脂肪
HDL
LDL
肝機能
腎機能
などです。
さらに、
いびき
息切れ
身体活動
筋力
なども重要です。
理想的な肥満治療とは、
体重が減った
だけではなく、
血圧がよくなった
血糖がよくなった
中性脂肪がよくなった
脂肪肝がよくなった
睡眠がよくなった
歩きやすくなった
筋肉を維持できた
という治療です。
まず現状を知ります。
内臓脂肪の変化を見る参考にします。
メタボでは血圧管理も重要です。
最初に取り組みやすい糖質対策です。
糖質の摂りすぎを確認します。
筋肉を守ります。
日常生活の身体活動を増やします。
減量中の筋肉量低下を防ぎます。
いびき・無呼吸にも注意します。
体重だけでなく、身体の中が改善しているか確認します。

【図2:今日から始める「太らない生活」10のチェック― 体重・腹囲・糖質・運動・睡眠・検査】
肥満・メタボは、
「食べ過ぎた本人の責任」
だけで説明できるものではありません。
体重には、
遺伝
食欲調節
ホルモン
睡眠
ストレス
生活環境
運動量
薬剤
など、さまざまな要因が関係します。
だからこそ、
叱るのではなく、原因を探す。
我慢だけに頼るのではなく、続けられる方法を考える。
これが肥満診療では重要だと考えています。
肥満・メタボを改善するために、特別な方法を一つ探す必要はありません。
基本は、
① 自分の状態を知る
② 糖質の摂りすぎを見直す
③ 蛋白質と食物繊維を確保する
④ 歩く
⑤ 筋トレをする
⑥ 睡眠を整える
⑦ 体重・腹囲・血圧・採血を確認する
⑧ 必要なら薬物療法も検討する
⑨ 極端な方法を避ける
⑩ 長く続ける
ことです。
そして最も重要なのは、
目的は、
内臓脂肪を減らし、筋肉を守り、10年後・20年後の健康を守ること
です。
肥満・メタボは、今日一日でできたものではありません。
ですから、今日一日で治す必要もありません。
まず、
甘い飲み物をやめる。
少し歩く。
腹囲を測る。
家庭血圧を測る。
その一つから始めてください。
小さな変化を積み重ね、それを続けることが重要です。
肥満・メタボ、高血圧、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝などが気になる方は、まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
40回のシリーズを一言でまとめるなら、
ではなく、
です。
体重が少し増えた日があっても構いません。
完璧な食事ができない日があっても構いません。
短期間の100点より、長期間続けられる80点。
肥満治療で本当に大切なのは、無理なく続けられる生活をつくることです。
第1回から第40回まで、
「なぜ太るのか」から始まり、食事・糖質制限・運動・睡眠、そして糖尿病・高血圧・脂質異常症・脂肪肝・心臓病・脳卒中・腎臓病・がん・認知症・肥満症治療薬まで解説してきました。
肥満は単なる体型の問題ではありません。
そして肥満治療は、単なるダイエットでもありません。
将来の病気を予防し、健康寿命を延ばすための治療です。
次回からは高血圧シリーズをスタートします。
「血圧はなぜ上がる?」
「家庭血圧と診察室血圧はどちらが重要?」
「症状がなくても治療する必要がある?」
高血圧の基本から、家庭血圧、塩分、肥満、睡眠時無呼吸、薬物治療、心臓・脳・腎臓を守る方法まで、順番に詳しく解説していきます。