第1694回:院長ブログ:脂肪肝と肥満の関係は?体重を減らすと肝臓は改善する? ~お酒を飲まなくても起こる脂肪肝。内臓脂肪・糖質・果糖との関係を知ろう~
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健診の腹部超音波検査で、
「脂肪肝があります」
と言われて驚く方は少なくありません。
「お酒はほとんど飲まないのに、どうして?」
と思うかもしれません。
しかし、脂肪肝はアルコールだけで起こる病気ではありません。
むしろ現在重要なのが、
肥満
内臓脂肪
糖尿病
脂質異常症
高血圧
など、代謝異常と関係して起こる脂肪肝です。
肝臓は、糖質・脂質・タンパク質などの代謝に重要な臓器です。
その肝臓の細胞に脂肪が過剰に蓄積した状態を、一般に脂肪肝と呼びます。
脂肪肝というと、
「肝臓の周囲に脂肪がついている」
と思われることがありますが、そうではありません。
問題になるのは、肝細胞の中に脂肪が蓄積することです。
以前は、お酒をほとんど飲まない人に起こる脂肪肝を、
NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)
と呼ぶことが一般的でした。
現在は国際的な疾患概念が見直され、代謝異常を背景とする脂肪性肝疾患について、**MASLD(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)**という名称が使われるようになっています。
これは、
「お酒を飲まないこと」ではなく、「代謝異常との関連」に注目する
という考え方です。
肥満、とくに内臓脂肪が増えると、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が起こりやすくなります。
すると脂肪組織から肝臓へ流れ込む遊離脂肪酸が増えたり、肝臓で脂肪が作られやすくなったりして、肝臓に中性脂肪が蓄積しやすくなります。
つまり、
内臓脂肪が増える
↓
インスリン抵抗性が強くなる
↓
肝臓への脂肪流入・脂肪合成が増える
↓
脂肪肝
という流れが起こり得ます。
そのため脂肪肝は、単独の肝臓病というより、全身の代謝異常の一つの表現として考えることが重要です。

【図1:肥満から脂肪肝はどう起こる?― 内臓脂肪・インスリン抵抗性・肝臓への脂肪蓄積】
なります。
脂肪肝は肥満の方に多いのですが、
BMIが正常なら脂肪肝にならない
わけではありません。
見た目は痩せていても、
内臓脂肪が多い
筋肉量が少ない
運動不足
糖質を多く摂取する
糖尿病がある
中性脂肪が高い
などの背景があれば脂肪肝を認めることがあります。
いわゆる非肥満型MASLDにも注意が必要です。
当院では、肥満・メタボや脂肪肝がある方では、糖質の摂りすぎがないかを重視しています。
糖質を摂取するとブドウ糖などとして利用されますが、必要量を超えたエネルギー摂取が続けば、肝臓で脂肪が作られる経路にも影響します。
特に見直したいのが、
砂糖入り飲料
清涼飲料水
甘いコーヒー
お菓子
菓子パン
主食の過剰摂取
夜食
などです。
「脂肪肝だから、脂っこいものだけを減らす」
という考え方では不十分な場合があります。
脂肪肝を考えるうえで、**果糖(フルクトース)**も重要です。
果糖は肝臓で代謝される割合が高く、特に過剰な摂取は肝臓での脂肪合成や中性脂肪増加に関係します。
注意したいのは、
砂糖や異性化糖を含む清涼飲料水
果汁飲料
甘い加工食品
などです。
液体の糖質は短時間で多量に摂取しやすいため、特に注意が必要です。
果物には食物繊維やビタミンなどが含まれています。
しかし、同時に果糖を含む糖質源でもあります。
したがって脂肪肝や肥満、中性脂肪高値、血糖高値がある方に、
「健康のために果物を積極的にたくさん食べましょう」
とは一律にはおすすめしません。
特に、
果汁ジュース
スムージー
ドライフルーツ
は糖質を摂取しやすくなるため注意が必要です。
一方で、通常量の丸ごとの果物まで全員が完全に禁止する必要があるわけではありません。
その人の食生活全体や代謝状態を見ながら量を考えます。
もちろんアルコールも重要です。
過剰な飲酒は肝臓への脂肪蓄積や肝障害の原因になります。
また実際には、
代謝異常+飲酒
が重なっている方もいます。
そのため、
「肥満が原因だからお酒は関係ない」
「糖質ゼロのお酒だから大丈夫」
とは考えない方がよいでしょう。
脂肪肝を指摘された場合には、飲酒量も正確に確認することが重要です。
脂肪肝というと、
「よくあるから大丈夫」
と思われがちです。
確かに、すべての脂肪肝が重い肝臓病へ進行するわけではありません。
しかし一部では、肝臓に炎症や細胞障害が生じ、さらに線維化が進行することがあります。
線維化が高度になると、
肝硬変
肝細胞癌
などにつながる可能性があります。
そのため現在の脂肪肝診療では、
「脂肪があるか」だけでなく、「肝線維化が進んでいないか」
を評価することが非常に重要です。
これも重要なポイントです。
ASTやALTは肝障害を評価する代表的な血液検査ですが、
AST・ALTが正常だから、脂肪肝や肝線維化が絶対にない
とは言えません。
逆にALTが高いからといって、原因がすべて脂肪肝とも限りません。
肝機能異常には、
ウイルス性肝炎
アルコール
薬剤
自己免疫性肝疾患
などさまざまな原因があります。
したがって、血液検査だけで自己判断しないことが大切です。
一般診療では、
AST
ALT
γ-GTP
血小板数
血糖・HbA1c
中性脂肪・HDL・LDLコレステロール
などの血液検査を確認します。
脂肪肝そのものの評価には、腹部超音波検査が広く利用されています。
さらに必要に応じて、
FIB-4 index
肝硬度測定
専門的な画像検査
などを用いて肝線維化リスクを評価することがあります。
FIB-4 indexは、
年齢・AST・ALT・血小板数
から計算する、肝線維化リスクを推定するための指標です。
採血結果から計算できるため便利ですが、
FIB-4だけで肝線維化を確定診断するものではありません。
年齢による影響も受けます。
リスクが高い場合には、肝硬度測定などの追加評価や専門医への紹介を検討します。
肥満を伴う脂肪肝では、減量は非常に重要な治療の一つです。
体重を減らすことで、
肝臓の脂肪蓄積
肝酵素
代謝異常
などの改善が期待できます。
さらに十分な減量が達成されるほど、炎症や線維化についても改善が期待できる可能性があります。
ただし、
「○kg痩せれば必ず治る」
というものではありません。
元の体重、脂肪肝の程度、糖尿病の有無、肝線維化などによって異なります。
脂肪肝では、内臓脂肪との関係も重要です。
そのため、
体重
BMI
腹囲
を一緒に確認しましょう。
体重がそれほど変わらなくても腹囲が減り、血糖や中性脂肪が改善している場合には、代謝状態が改善している可能性があります。
特別な「肝臓デトックス食品」が必要なわけではありません。
まず、
甘い飲み物を減らす
お菓子・菓子パンを減らす
主食の過剰摂取を見直す
果糖の過剰摂取を避ける
夜食を減らす
アルコールを見直す
ことを考えます。
そのうえで、
肉
魚
卵
大豆製品
などから必要なタンパク質を確保します。
糖質を多く摂っている方では、糖質摂取量を減らすことで体重、中性脂肪、血糖などが改善し、肝脂肪の減少につながることが期待できます。
そのため、糖質制限は脂肪肝を伴う肥満・メタボに対する有力な食事療法の一つです。
ただし、
糖質を減らせば、脂質を無制限に食べてもよい
という意味ではありません。
体重、脂質、血糖、肝機能などを確認しながら、食事全体を調整することが重要です。
ウォーキングなどの有酸素運動は、体重管理や内臓脂肪減少だけでなく、肝脂肪の改善にも役立ちます。
さらに筋力トレーニングを組み合わせることで、
筋肉を守る
インスリン感受性を改善する
身体機能を維持する
ことを目指します。
つまり、
食事改善+有酸素運動+筋トレ
が基本です。
清涼飲料水や加糖飲料を見直します。
主食・お菓子・菓子パン・夜食などを確認します。
特に果汁飲料や甘い加工食品に注意します。
糖質ゼロでも飲みすぎは避けます。
筋肉を守りながら減量します。
ウォーキングと筋トレを組み合わせます。
脂肪肝を「よくあるから」と放置しません。

【図2:脂肪肝を改善する7つの習慣― 糖質・果糖・飲酒・運動を見直そう】
脂肪肝を指摘されたときに重要なのは、
「肝臓だけを見る」のではなく、身体全体の代謝状態を見ること
です。
当院では、
体重・BMI・腹囲
血圧
血糖・HbA1c
中性脂肪・HDL・LDLコレステロール
AST・ALT・γ-GTP
血小板数
などを総合的に確認します。
そして肥満・メタボを伴う方では、糖質の摂りすぎを見直し、減量と運動を進めることを重視します。
一方、肝線維化の進行が疑われる場合や、脂肪肝だけでは説明できない肝障害がある場合には、必要に応じて消化器・肝臓専門医へご紹介します。
脂肪肝は、
「お酒を飲む人だけの病気」
ではありません。
現在では、
肥満
内臓脂肪
インスリン抵抗性
糖尿病
脂質異常症
などと関連するMASLDが非常に重要です。
対策の基本は、
糖質の摂りすぎを見直す
甘い飲み物を減らす
果糖の過剰摂取を避ける
飲酒を見直す
適切に減量する
ウォーキングをする
筋トレをする
ことです。
そしてもう一つ重要なのが、
「脂肪肝がある」だけで終わらず、肝線維化のリスクを評価すること。
脂肪肝は、肝臓だけではなく全身の代謝状態を見直すきっかけとして考えましょう。
健診で、
「脂肪肝」
「ALTが高い」
「γ-GTPが高い」
と言われても、症状がないため放置してしまう方が少なくありません。
しかし、脂肪肝の背景に肥満・糖尿病・脂質異常症などが隠れていることがあります。
また、一部では肝線維化が進行します。
健診で脂肪肝や肝機能異常を指摘された方は、まずは内科クリニックへご相談ください。
必要な検査を行い、専門的な評価が必要な場合には専門医療機関へご紹介します。
脂肪肝対策というと、
「脂っこいものを食べなければいい」
と思われがちです。
しかし、肥満・メタボに伴う脂肪肝では、糖質、とくに甘い飲み物やお菓子、過剰な主食、果糖を含む飲料なども重要です。
肝臓の脂肪を減らしたいなら、
「脂質だけを見る」のではなく、糖質・総摂取量・体重・内臓脂肪・運動までまとめて見直す。
これが大切です。
「太るとなぜ血糖が上がる?」
「体重を減らすと糖尿病は改善する?」
「糖尿病になったら一生治らない?」
次回は、内臓脂肪とインスリン抵抗性、肥満から2型糖尿病へ進む仕組み、減量による血糖・HbA1cの改善、糖尿病の寛解(remission)という考え方まで詳しく解説します。