第1695回:院長ブログ:肥満と糖尿病の関係は?痩せると血糖・HbA1cは改善する? ~内臓脂肪を減らすことは、2型糖尿病の予防・改善につながります~
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2型糖尿病と肥満には深い関係があります。
特に重要なのが、前回まで解説してきた内臓脂肪です。
内臓脂肪が増えると、
インスリンが効きにくくなる
↓
血糖を下げるために、より多くのインスリンが必要になる
↓
それでも補えなくなると血糖が上昇する
という変化が起こりやすくなります。
これが、肥満から2型糖尿病へ進む重要な仕組みの一つです。
インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンです。
食事をすると血糖値が上昇します。
するとインスリンが分泌され、
筋肉や脂肪組織などへのブドウ糖の取り込みを促す
肝臓からの糖の放出を抑える
などの働きによって、血糖を適切な範囲に保ちます。
インスリンは、私たちが生きるために必要不可欠なホルモンです。
糖質制限の説明で、
「インスリンが出るから太る」
と単純化されることがあります。
しかし、インスリンそのものを悪者にするのは適切ではありません。
問題になるのは、
糖質やエネルギーの過剰摂取
内臓脂肪の蓄積
運動不足
などが重なり、インスリンが効きにくい状態になることです。
この状態をインスリン抵抗性といいます。
インスリンは分泌されているのに、身体が十分に反応してくれない状態です。
たとえば筋肉では、インスリンの作用による糖の取り込みが低下します。
肝臓でもインスリンの作用が弱くなり、必要以上に糖を血液中へ送り出しやすくなります。
すると膵臓は、
「もっとインスリンを出さなければ」
と頑張ります。
初期には、インスリン分泌を増やすことで血糖を正常に保てることがあります。
このため、糖尿病になる前から代謝異常は始まっている可能性があります。
インスリン抵抗性が強くても、膵臓が十分なインスリンを分泌できれば血糖をある程度維持できます。
しかし、インスリン分泌が需要に追いつかなくなると、
食後血糖が上がる
↓
空腹時血糖も上がる
↓
HbA1cが上昇する
という変化が起こります。
2型糖尿病は、
インスリン抵抗性+インスリン分泌能の不足
がさまざまな程度で組み合わさって発症します。
日本人を含む東アジア人では、欧米人と比較してBMIがそれほど高くなくても2型糖尿病を発症することがあり、体重だけで安心することはできません。
内臓脂肪が過剰になると、脂肪組織から放出される脂肪酸やさまざまな生理活性物質のバランスが変化します。
それが肝臓や筋肉などに影響し、インスリン抵抗性を悪化させます。
さらに肝臓や筋肉など、本来大量の脂肪を蓄える場所ではない組織に脂質が蓄積する異所性脂肪も代謝異常と関係します。
つまり、
内臓脂肪の増加は「お腹が出る」という見た目だけの問題ではない
のです。

【図1:肥満から2型糖尿病へ進む仕組み― 内臓脂肪→インスリン抵抗性→血糖上昇】
肥満を伴う2型糖尿病では、減量によって血糖コントロールが改善することが期待できます。
体重、とくに内臓脂肪が減少すると、
インスリン抵抗性が改善する
肝臓の脂肪が減少する
筋肉で糖を利用しやすくなる
などの変化が起こります。
その結果、
空腹時血糖
食後血糖
HbA1c
が改善することがあります。
ここは非常に重要です。
体重100kgの方が、
「標準体重まで30kg以上減らさないと意味がない」
と思ってしまうと、最初から減量を諦めてしまうかもしれません。
しかし実際には、現在の体重からある程度減量するだけでも代謝改善が期待できます。
そして減量幅が大きくなるにつれて、血糖や脂肪肝などにより大きな改善がみられる場合があります。
大切なのは、
最初から理想体重だけを目標にしないこと
です。
HbA1cは、過去1~2か月程度を中心とした血糖状態を反映する指標です。
そのため食事や運動を改善しても、翌日にHbA1cが大きく下がるわけではありません。
一方、血糖値は食事や運動などによって比較的短時間でも変化します。
したがって、
血糖値=その時点の状態
HbA1c=ある程度長期間の血糖状態
と考えると分かりやすいでしょう。
この質問もよくあります。
以前は、
「2型糖尿病は一度なったら一生治らない」
と説明されることが少なくありませんでした。
しかし現在では、一部の2型糖尿病患者さんで、十分な減量などによって薬を使用しなくても糖尿病域ではない血糖状態を維持できることがわかっています。
この状態を**糖尿病の寛解(remission)**と呼びます。
国際的なコンセンサスでは、一般的に、
血糖降下薬を使用せずに少なくとも3か月間、HbA1c 6.5%未満を維持している状態
を2型糖尿病の寛解とする考え方が示されています。
ここで重要なのは、
「完治」ではなく「寛解」
と呼ぶことです。
血糖が正常化して薬が不要になったとしても、
体重が再び増える
食生活が元に戻る
運動量が低下する
などによって、糖尿病域へ戻ることがあります。
また過去に糖尿病だったことによる長期的な影響についても、完全に無視できるわけではありません。
そのため寛解後も、
体重
血糖
HbA1c
血圧
脂質
などの定期的な確認が必要です。
いいえ。
すべての2型糖尿病患者さんが寛解できるわけではありません。
一般に、
糖尿病になってからの期間
膵臓のインスリン分泌能力
減量できる程度
年齢や合併症
などによって可能性は異なります。
特に発症から比較的早い段階で、肥満を伴っている場合には、十分な減量によって大きな改善が得られる可能性があります。
だからこそ、糖尿病を早期に発見して早く介入することが重要です。
糖質は食後血糖を上昇させる主要な栄養素です。
そのため糖質摂取量を適切に減らすことで、
食後血糖の上昇を抑える
インスリン需要を減らす
体重減少につなげる
ことが期待できます。
当院では、肥満・メタボや2型糖尿病の方に対して、糖質の摂りすぎを見直すことを積極的に取り入れています。
特に優先して見直したいのが、
砂糖入り飲料
お菓子
菓子パン
ご飯・パン・麺類の過剰摂取
夜食
です。
「野菜から食べれば、糖質をいくら食べても大丈夫」
というわけではありません。
食べる順番だけでなく、糖質そのものの量を確認することも重要です。
果物には食物繊維やビタミンなどが含まれていますが、同時に果糖やブドウ糖などの糖質も含まれています。
そのため糖尿病や肥満がある方に、
「果物は健康によいので積極的にたくさん食べましょう」
とは一律にはおすすめしません。
特に、
果汁ジュース
スムージー
ドライフルーツ
などは糖質を摂取しやすいため注意が必要です。
糖質を減らすときには、
肉
魚
卵
大豆製品
などからタンパク質を確保することが大切です。
体重を減らすときに筋肉まで大きく減ってしまわないよう、運動も組み合わせます。
ただし慢性腎臓病や蛋白尿がある方では、タンパク質摂取量を個別に考える必要があります。
これは非常に重要です。
糖尿病治療薬を使用している方が食事量や糖質量を急激に減らすと、薬剤によっては低血糖を起こすことがあります。
特に、
インスリン
SU薬など
を使用している場合には注意が必要です。
また、SGLT2阻害薬を使用中に極端な糖質制限・ケトジェニック食を行うと、血糖値がそれほど高くなくてもケトアシドーシスを起こす危険性があります。
糖尿病治療中の方は、薬をそのままにして自己流で極端な食事制限を始めず、医師と相談してください。
運動すると筋肉で糖が利用されます。
また運動を継続することで、インスリン感受性の改善が期待できます。
おすすめは、
ウォーキングなどの有酸素運動
+
筋力トレーニング
です。
筋肉は糖を利用する重要な組織です。
減量中もできるだけ筋肉を守ることが、長期的な代謝管理につながります。
減量によって血糖値が改善すると、
「もう薬はいらないのでは?」
と思うことがあります。
実際に、体重減少によって薬を減量・中止できる患者さんはいます。
しかし、薬の種類やHbA1c、低血糖リスク、腎機能などによって判断は異なります。
糖尿病薬を自己判断で中止しないでください。
検査値を確認しながら医師と調整します。
肥満・メタボがある方では、血糖だけを確認するのではなく、
体重
BMI
腹囲
血圧
空腹時血糖
HbA1c
中性脂肪
HDL・LDLコレステロール
肝機能
腎機能
尿アルブミン
などを総合的に確認することが重要です。
糖尿病は血糖だけの病気ではなく、心臓・血管・腎臓など全身に関係する病気だからです。
液体の糖質をまず見直します。
主食・お菓子・菓子パン・夜食などを確認します。
体重だけでなく腹囲にも注目します。
筋肉を守りながら減量します。
日常の活動量を増やします。
糖を利用する筋肉を守ります。
症状がない段階から変化を見ます。

【図2:肥満から糖尿病を防ぐ7つの習慣― 糖質・内臓脂肪・運動を見直そう】
肥満を伴う2型糖尿病では、
「血糖値だけを薬で下げればよい」
とは考えていません。
もちろん必要な薬物治療は適切に行います。
同時に、
糖質の摂りすぎを見直す
体重・腹囲を減らす
筋肉を守る
身体活動を増やす
ことも非常に重要です。
減量によって血糖が改善すれば、薬剤を減らせる場合もあります。
さらに一部では、2型糖尿病の寛解を目指せる可能性もあります。
ただし、治療目標は患者さんによって異なります。
「HbA1cだけ」ではなく、体重・血圧・脂質・腎臓・心血管リスクまで含めて管理することを大切にしています。
肥満、とくに内臓脂肪の蓄積は、2型糖尿病の重要なリスク因子です。
内臓脂肪が増えると、
インスリン抵抗性
↓
インスリン需要の増加
↓
膵臓のインスリン分泌が追いつかなくなる
↓
血糖・HbA1c上昇
という流れが起こりやすくなります。
一方、肥満を伴う2型糖尿病では、減量によって血糖コントロールが大きく改善する可能性があります。
大切なのは、
糖質の摂りすぎを見直す
内臓脂肪を減らす
タンパク質を確保する
ウォーキングをする
筋トレをする
定期的に検査する
ことです。
そして2型糖尿病は、一部の方では十分な減量によって寛解を目指せる時代になっています。
糖尿病は、
「症状が出てから治療する病気」
ではありません。
血糖が高くても、初期にはほとんど症状がないことがあります。
健診で、
血糖が高い
HbA1cが高い
腹囲が大きい
中性脂肪が高い
脂肪肝がある
などを指摘されたら、それぞれを別々の問題と考えず、内臓脂肪を中心とした代謝異常として一度まとめて評価してみましょう。
まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
肥満を伴う2型糖尿病では、
「血糖を下げる」ことと「体重を減らす」ことを別々に考えない
ことが大切です。
内臓脂肪を減らすことで、糖尿病の根底にあるインスリン抵抗性そのものが改善する可能性があります。
だからこそ、
薬+食事+減量+運動
をその人に合わせて組み合わせます。
目標は単に次回のHbA1cを下げることではなく、長期的に糖尿病と心血管・腎臓のリスクを減らすことです。
「太るとなぜ血圧が上がる?」
「体重を減らせば降圧薬を減らせる?」
「塩分だけ気をつければいい?」
次回は、内臓脂肪・インスリン抵抗性・交感神経・腎臓と血圧の関係、減量による血圧改善、塩分・運動・睡眠時無呼吸との関係まで詳しく解説します。