第1716回:院長ブログ:血圧が高いと頭痛やめまいが起こる?高血圧の症状と危険なサイン ~「頭が痛いのは血圧のせい?」高血圧と自覚症状の本当の関係を知りましょう~
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診療していると、
「最近、頭痛がするので血圧が高いのではないかと心配です」
「めまいがするのは高血圧のせいでしょうか?」
という相談を受けることがあります。
高血圧というと、頭痛やめまいなどの症状が現れるイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際には、
頭痛がないから血圧が正常とは限りませんし、頭痛があるからといって高血圧が原因とも限りません。
一方、急激な血圧上昇に伴って頭痛などが現れる場合や、脳卒中などの重大な病気が隠れている場合もあります。
今回は、高血圧と自覚症状の関係について詳しく解説します。
高血圧は、しばしば**サイレントキラー(静かな殺し屋)**と呼ばれます。
その理由は、血圧が高くても、自覚症状がほとんど現れないことが多いためです。
例えば、
150/90mmHg
160/100mmHg
といった血圧が続いていても、普段どおり生活できている方は少なくありません。
頭痛もなく、めまいもなく、元気に仕事や運動をしている方もいます。
しかし、症状がないからといって、血管や臓器への負担がなくなるわけではありません。
高い血圧が長期間続くと、
脳卒中
冠動脈疾患
心不全
慢性腎臓病
などのリスクが高くなります。
つまり、
ここは誤解されやすいところです。
一般に、軽度から中等度の慢性的な高血圧だけで、頭痛が直接起こるという明確な根拠はありません。
国際頭痛分類第3版(ICHD-3)でも、軽度から中等度の慢性的な高血圧が頭痛を引き起こすとは考えにくいとされています。
つまり、
血圧が150だから頭痛がする
血圧が160だから後頭部が痛い
とは、単純には判断できません。
もちろん、高血圧がある方に頭痛が起こらないという意味ではありません。
高血圧と頭痛が同時に存在していても、両者に直接の因果関係があるとは限らないということです。
例えば、片頭痛や緊張型頭痛などによって痛みを感じると、身体にはストレス反応が生じます。
痛みや不安によって交感神経が活性化すると、
心拍数が増える
心臓の収縮が強くなる
血管が収縮する
といった変化が起こり、一時的に血圧が上昇することがあります。
つまり、
血圧が高いから頭が痛い
のではなく、
という場合もあるのです。
この違いを判断するためには、頭痛がないときの普段の血圧を確認することが重要です。
急激かつ著しい血圧上昇が起こった場合には、頭痛が生じることがあります。
国際頭痛分類では、高血圧に起因する頭痛を考える際、収縮期血圧180mmHg以上、または拡張期血圧120mmHg以上といった著しい血圧上昇が重要な判断材料になります。
ただし、この数字を超えれば必ず頭痛が起こるわけではありません。
また、血圧が高いだけで、すべての頭痛を高血圧のせいにしてよいわけでもありません。
頭痛が血圧上昇と同じ時期に始まり、血圧の改善とともに軽快するかなど、経過も含めて判断します。
一方、非常に強い頭痛では、脳出血やくも膜下出血などを除外する必要があります。
「血圧が高いと後頭部が痛くなる」
という話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、後頭部の痛みだけで高血圧が原因だと判断することはできません。
後頭部の頭痛には、
緊張型頭痛
片頭痛
首や肩の筋肉に関連する痛み
頸椎の病気
など、さまざまな原因があります。
一方、突然発症した激しい後頭部痛では、くも膜下出血や脳・頸部の血管の病気などを考える必要があります。
特に、これまで経験したことのない突然の激しい頭痛は、血圧の数字にかかわらず緊急性のある症状です。
めまいも、高血圧の患者さんからよく相談される症状です。
しかし、
とは限りません。
めまいには、いくつかの種類があります。
目が回るようなめまい
身体がふわふわする感じ
立ち上がったときの立ちくらみ
身体のバランスが取れない状態
などです。
それぞれ原因が異なる場合があります。
例えば、回転するようなめまいは内耳の病気が関係することがあります。
立ち上がったときのふらつきは、起立性低血圧や脱水、薬の影響などが原因になることがあります。
また、急に歩けなくなるような強いめまいでは、脳卒中などの病気を考える必要があります。
したがって、めまいが起きたときには、血圧だけでなく、症状の種類や起こり方を確認することが重要です。
高血圧の治療中に、めまいや立ちくらみが生じる場合があります。
このとき確認したいのが、
降圧薬による血圧低下
起立性低血圧
脱水
食事量や水分摂取量の低下
などです。
特に高齢者では、座っているときの血圧が適切でも、立ち上がると大きく下がることがあります。
このような場合には、必要に応じて立位血圧を確認します。
ただし、降圧薬を服用しているからといって、めまいの原因が必ず薬にあるとは限りません。
自己判断で薬を中止せず、医療機関で相談してください。
【図1:高血圧で頭痛・めまいは起こる?― 血圧上昇と症状の関係を整理】
高血圧の中には、直ちに医療機関で対応する必要がある状態があります。
それが、
です。
高血圧緊急症とは、著しい血圧上昇に伴って、脳・心臓・腎臓・大動脈などに急性の臓器障害が生じている状態をいいます。
例えば、
高血圧性脳症
急性心不全・肺水腫
急性冠症候群
大動脈解離
急性腎障害
などが挙げられます。
こうした状態では、医療機関で臓器障害を評価し、必要に応じて慎重に血圧を下げる治療を行います。
ここは重要なポイントです。
収縮期血圧180mmHg以上、または拡張期血圧120mmHg以上という著しい血圧上昇は、緊急性を考える目安になります。
しかし、
重要なのは、急性の臓器障害が起きているかどうかです。
例えば、非常に高い血圧でも急性臓器障害が認められない場合には、必ずしも救急で急速に血圧を下げることが適切とは限りません。
一方、脳卒中や大動脈解離などが疑われる場合には、血圧が180/120mmHg未満であっても、緊急対応が必要です。
2025年の米国AHA/ACC高血圧ガイドラインでも、著しい高血圧に急性臓器障害を伴う場合と、伴わない場合を区別して対応することが重要とされています。
突然の次のような症状には、特に注意が必要です。
突然の激しい頭痛
これまでに経験したことのない激しい頭痛は、くも膜下出血などの可能性があります。
片側の手足や顔の麻痺・しびれ
突然、片方の手足に力が入らなくなる場合には、脳卒中が疑われます。
ろれつが回らない・言葉が出ない
急に言葉が出なくなったり、会話が成立しなくなったりする場合には注意が必要です。
急な視力障害
突然見えなくなる、物が二重に見えるなどの症状も、脳卒中などのサインとなる場合があります。
突然、立てない・歩けない
強いめまいとともに、身体のバランスが取れなくなった場合には、脳の病気が隠れている可能性があります。
胸の強い痛みや呼吸困難
急性冠症候群、急性心不全、大動脈の病気などを考える必要があります。
意識障害・けいれん
高血圧性脳症や脳卒中など、重篤な病気の可能性があります。
症状が短時間で消えた場合にも、一過性脳虚血発作(TIA)などの可能性があるため、速やかな評価が必要です。
日本脳卒中協会では、脳卒中の症状として、突然の麻痺、言葉の異常、歩行障害、視覚障害、激しい頭痛などを挙げています。
脳卒中には、
脳梗塞
脳出血
くも膜下出血
があります。
いずれも早期の診断と治療が重要です。
特に、突然起こった症状では、発症した時刻が治療方針の判断に重要となることがあります。
「少し休めば治るかもしれない」と様子を見るのではなく、速やかな救急対応を心がけましょう。
家庭に血圧計がある場合、症状が出たときの血圧を記録することは参考になります。
ただし、血圧の測定よりも症状への対応を優先すべき場合があります。
例えば、突然の激しい頭痛や麻痺、意識障害などがある場合には、繰り返し血圧を測って様子を見るのではなく、直ちに救急要請してください。
一方、以前から繰り返している軽い頭痛などで、明らかな危険症状がない場合には、測定した血圧と症状を記録して医療機関で相談するとよいでしょう。
「頭痛があるときだけ血圧が高いのか」
「頭痛がないときも血圧が高いのか」
を確認することが、原因を考える手掛かりになります。
高血圧の怖さは、症状がなくても身体に影響を及ぼすことです。
例えば、
家庭血圧が高い状態が続いている
健診で何度も高血圧を指摘されている
降圧薬を服用しているのに目標血圧に達していない
といった場合には、症状がなくても評価が必要です。
JSH2025では、高血圧の診断基準を、
診察室血圧 140/90mmHg以上
家庭血圧 135/85mmHg以上
としています。
ただし、一度の測定だけで判断せず、適切な条件で繰り返し測定した血圧を評価することが重要です。
JSH2025では、高血圧患者の一般的な降圧目標として、
診察室血圧 130/80mmHg未満
家庭血圧 125/75mmHg未満
が示されています。
ただし、降圧治療によって、
めまい
立ちくらみ
ふらつき
失神
腎機能の悪化
などが生じる場合には注意が必要です。
特に高齢者やフレイルのある方では、目標血圧だけでなく、治療の安全性や忍容性を考慮します。
「症状がないから治療しない」ことも、「数字だけを追いかけて無理に下げる」ことも適切ではありません。
頭痛にはさまざまな種類があります。
代表的なものとして、
片頭痛
緊張型頭痛
薬剤の使用過多による頭痛
頸部の筋肉や関節に関連する頭痛
などがあります。
また、頻度は低いものの、脳血管障害や頭蓋内の病気などによる二次性頭痛が隠れている場合もあります。
特に、初めて経験する頭痛、以前と性質が変わった頭痛、次第に悪化する頭痛などでは、原因を慎重に評価する必要があります。
「血圧が高いから頭が痛いのだろう」と自己判断するのではなく、頭痛そのものの診断も大切です。
めまいがある場合には、まず症状の特徴を確認します。
ぐるぐる回るのか
ふわふわするのか
立ち上がったときだけ起こるのか
歩行が難しいのか
耳鳴りや難聴を伴うのか
などによって、考える病気が異なります。
例えば、内耳の病気、起立性低血圧、不整脈、貧血、脱水、薬剤などが原因になる場合があります。
また、突然の強いめまいと歩行障害を伴う場合には、脳卒中の可能性も考える必要があります。
血圧だけではなく、神経症状、心拍数、服薬状況なども含めて評価します。
【図2:高血圧の危険なサイン― 頭痛・めまい・脳卒中症状と受診の目安】
最も重要なのは、症状が出てから対応するのではなく、普段から血圧を管理することです。
基本となるのは、
家庭血圧を継続して測る
塩分の摂りすぎを見直す
適正体重を維持する
定期的に運動する
飲酒を控える
禁煙する
睡眠を整える
必要に応じて降圧薬を使用する
といった対策です。
肥満やメタボがある場合には、体重や内臓脂肪の管理も重要です。
当院では、肥満・メタボを伴う方には、糖質の過剰摂取を見直すことも積極的な選択肢の一つと考えています。
適切な糖質制限によって体重や内臓脂肪が減少すれば、血圧改善につながる可能性があります。
ただし、糖質制限だけで高血圧が必ず改善するわけではありません。
減塩、運動、睡眠、必要な薬物治療などを組み合わせることが重要です。
頭痛やめまいがある方から、
「血圧が原因でしょうか?」
と相談を受けた場合、当院では、血圧の数字だけで原因を決めつけないことを大切にしています。
まず、
普段の家庭血圧
頭痛・めまいの起こり方
症状が始まった時期
神経症状の有無
服薬状況
脱水や睡眠不足
糖尿病・腎臓病などの合併症
を確認します。
必要に応じて血液検査、尿検査、心電図などを行い、脳血管障害などが疑われる場合には、速やかに専門医療機関へ紹介します。
また、高血圧と診断された方には、症状の有無にかかわらず、適切な血圧管理を継続することの重要性を説明しています。
高血圧は、自覚症状がほとんどないことが多い病気です。
軽度から中等度の慢性的な高血圧だけで、頭痛が直接起こるとは限りません。
また、頭痛やめまいには、血圧以外にもさまざまな原因があります。
一方で、著しい血圧上昇に伴う頭痛や、突然の麻痺・言語障害・視力障害・激しい頭痛などは、重篤な病気のサインである可能性があります。
大切なのは、
そして、
普段の血圧を把握するとともに、危険な症状を見逃さないことが重要です。
高血圧は、症状がないまま長い時間をかけて脳・心臓・腎臓などに影響することがあります。
そのため、
「元気だから血圧は測らなくていい」
とは考えず、定期的に血圧を確認することをおすすめします。
また、頭痛やめまいが続く場合には、高血圧だけでなく、ほかの病気が関係している可能性もあります。
まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
患者さんからよく聞かれるのが、
「血圧が高いと頭が痛くなるんですよね?」
という質問です。
しかし、実際には、血圧が高くても頭痛がない方がほとんどです。
逆に、頭痛による痛みや不安で、一時的に血圧が高くなることもあります。
ですから、
そして、突然の激しい頭痛や麻痺、言葉の異常などが現れた場合には、普段の血圧にかかわらず、速やかに救急対応を受けてください。
「塩分を控えているのに、なぜ血圧が高いの?」
「親が高血圧だと、自分も高血圧になる?」
高血圧の原因は、塩分の摂りすぎだけではありません。
肥満や内臓脂肪、遺伝的な体質、加齢、ストレス、睡眠時無呼吸、腎臓の病気など、さまざまな要因が関係しています。
次回は、高血圧が起こる仕組みと、生活習慣・遺伝・病気の関係について、最新のガイドラインとエビデンスに基づいて詳しく解説します。
※本記事は日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025(JSH2025)」、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)、2025年AHA/ACC高血圧ガイドライン、日本脳卒中協会の公開資料、および頭痛・めまいと高血圧の関連に関する医学研究を参考に、患者さん向けに独自の文章・構成で作成しています。ガイドラインの文章・図表・フローチャート等は転載していません。