第1669回:院長ブログ:メタボリックシンドロームとは?診断基準をわかりやすく解説 ~「お腹が出ている=メタボ」ではありません~
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「最近お腹が出てきたからメタボかな」
日常会話では、「メタボ」という言葉が「太っている」「お腹が出ている」という意味で使われることがあります。
しかし医学的な**メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)**は、それだけではありません。
ポイントは、
内臓脂肪の蓄積を背景として、血圧・血糖・脂質など複数の代謝異常が重なっていること
です。
つまり、メタボで本当に問題なのは外見ではありません。
体の中で複数の動脈硬化リスクが重なっていることなのです。
前回の記事では、体脂肪には大きく、
皮下脂肪
内臓脂肪
があることを解説しました。
メタボリックシンドロームで特に重要なのが内臓脂肪です。
内臓脂肪が過剰に蓄積すると、脂肪組織から放出される脂肪酸や生理活性物質のバランスが変化し、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」などが生じやすくなります。
その結果、
血圧が上がる
血糖が上がる
中性脂肪などの脂質代謝が乱れる
といった変化が重なりやすくなります。
これがメタボリックシンドロームの基本的な考え方です。
日本の診断基準では、まず腹囲を確認します。
男性:85cm以上
女性:90cm以上
これに加えて、次の3項目のうち2項目以上に該当すると、メタボリックシンドロームと診断されます。
中性脂肪 150mg/dL以上
または
HDLコレステロール 40mg/dL未満
収縮期血圧 130mmHg以上
または
拡張期血圧 85mmHg以上
空腹時血糖 110mg/dL以上
脂質異常症、高血圧、糖尿病などに対する薬物治療を受けている場合も、それぞれ該当項目として扱われます。

【図1:メタボリックシンドロームの診断基準 ― 腹囲+3つのリスクをチェック】
ここは誤解されやすいところです。
腹囲が基準以上というだけでは、メタボリックシンドロームとは診断されません。
腹囲は、内臓脂肪蓄積を推定するための入口です。
そこに、
血圧
血糖
脂質
の異常が複数重なっているかを確認します。
逆に、腹囲の基準を満たさないからといって、糖尿病や高血圧、脂質異常症のリスクがないわけでもありません。
メタボの診断基準は、健康状態を評価するための一つの枠組みとして理解することが大切です。
メタボリックシンドロームの重要な考え方が、
リスクの重積
です。
たとえば、
「血圧が少し高いだけ」
「血糖が少し高いだけ」
「中性脂肪が少し高いだけ」
であれば、本人にはほとんど症状がないことも珍しくありません。
しかし、
内臓脂肪 + 血圧高値 + 高血糖 + 脂質異常
というように複数の危険因子が重なると、動脈硬化性疾患のリスクが高まります。
一つひとつの数字だけを見るのではなく、全体としてどれだけリスクが重なっているかを見ることが重要なのです。
内臓脂肪の蓄積を背景として、
インスリン抵抗性
血圧上昇
糖代謝異常
脂質代謝異常
などが重なると、血管への負担が増えていきます。
その状態が長く続けば、動脈硬化が進行し、
心筋梗塞
狭心症
脳梗塞などの脳血管疾患
につながる可能性があります。
しかも動脈硬化は、かなり進行するまで自覚症状がないことがあります。
そのため、症状が出てからではなく、健康診断の段階でリスクを見つけて改善することに意味があります。
【図2:内臓脂肪→メタボ→動脈硬化 ― リスクが重なる仕組み】
これも非常に重要です。
メタボリックシンドロームの診断基準を満たさなかったとしても、
「健康上まったく問題がない」
とは限りません。
たとえば、
血圧が非常に高い
糖尿病がある
LDLコレステロールが高い
などの場合、それぞれ単独でも適切な評価・治療が必要になることがあります。
特にLDLコレステロールは、メタボの診断項目には含まれていませんが、動脈硬化を考えるうえで非常に重要な指標です。
したがって、
「メタボか、メタボではないか」だけで健康状態を二分しないこと
が大切です。
特定健診などでは、
メタボリックシンドローム該当
予備群
などと判定されることがあります。
これは、「病気になった・なっていない」という単純な境界線ではありません。
まだ診断基準を完全には満たしていなくても、内臓脂肪や代謝異常が現れ始めている段階で生活習慣を見直すことには大きな意味があります。
むしろ、
異常が軽いうちに対策を始める
ことが生活習慣病予防の基本です。
最初から完璧な生活を目指す必要はありません。
まずは、
体重・腹囲を確認する
血圧を確認する
血糖・HbA1cを確認する
中性脂肪・HDL・LDLを確認する
食事・運動・飲酒・睡眠を振り返る
ことから始めます。
そして重要なのは、
「腹囲だけを減らせばいい」わけではない
ということです。
目的は、内臓脂肪を減らしながら、血圧・血糖・脂質などの代謝状態を改善することです。
メタボ対策というと、
「10kg、20kg痩せなければ意味がない」
と思う方もいます。
しかし、必ずしもそうではありません。
肥満症の診療では、現在の体重から数%程度の減量でも、血圧・血糖・脂質などの改善が期待できることが知られています。
重要なのは、短期間で極端に体重を落とすことではなく、
内臓脂肪を減らし、代謝状態を改善し、その状態を長く維持すること
です。
メタボリックシンドロームは、「太っていることを注意するための言葉」ではありません。
将来の高血圧、糖尿病、脂質異常症、さらに心血管疾患につながるリスクを早い段階で見つけるための考え方です。
健診で「メタボ」「メタボ予備群」と言われたら、腹囲だけを見るのではなく、
血圧・血糖・HbA1c・中性脂肪・HDL・LDL・肝機能など
健診結果全体を確認しましょう。
まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
メタボリックシンドロームとは、
内臓脂肪の蓄積を背景に、血圧・血糖・脂質などの異常が重なった状態
です。
単に「お腹が出ている」という意味ではありません。
大切なのは、
内臓脂肪
+
血圧
+
血糖
+
脂質
をまとめて見ることです。
そしてメタボ対策の本当の目的は、腹囲の数字を小さくすることではありません。
その先にある動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中などを予防することです。
健診で「メタボ」と書かれていても、自覚症状がないため、そのままにしてしまう方は少なくありません。
しかし、症状がない時期こそ生活習慣を見直すチャンスです。
今年の健診結果だけではなく、過去数年間の腹囲・血圧・血糖・脂質の推移もぜひ確認してみてください。
健診結果を見るときは、「基準値を超えた項目に○をつける」だけで終わらせないことです。
腹囲が増え、それと一緒に血圧・血糖・中性脂肪も少しずつ上昇している――。
こうした複数の数字が同じ方向に動いている変化に早く気づくことが、メタボ対策ではとても重要です。
「食べている量は昔と変わらないのに、なぜか太ってきた」。
次回は、摂取エネルギーと消費エネルギー、身体活動、筋肉、加齢、睡眠などが体重にどう影響するのかを整理して、体重増加の仕組みをわかりやすく解説します。