第1706回:院長ブログ:血圧が高いと言われたら?高血圧の基本と「放置してはいけない理由」 ~症状がなくても血管は傷む。家庭血圧から始める高血圧対策~
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健康診断で、
「血圧が高いですね」
と言われても、
「今日は緊張していたから」
「頭痛もないし大丈夫」
「昔から少し高いだけ」
と、そのままにしている方は少なくありません。
しかし高血圧で最も注意したいのは、
です。
心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返し、全身へ血液を送っています。
その血液が血管の壁に及ぼす圧力が血圧です。
血圧には、
収縮期血圧(上の血圧)
拡張期血圧(下の血圧)
があります。
心臓が収縮して血液を送り出したときの血圧が、収縮期血圧です。
一般に、
「上が○○」
と言うときの数字です。
加齢などによって動脈が硬くなると、特に上の血圧が高くなることがあります。
心臓が拡張して次の血液をためているときの血圧が、拡張期血圧です。
一般に、
「下が○○」
と言われる数字です。
上だけ高い場合、下だけ高い場合、両方高い場合があります。
血圧は常に同じではありません。
たとえば、
緊張
運動
睡眠不足
寒さ
痛み
喫煙
カフェイン
飲酒
ストレス
などによって変動します。
そのため、健診や診察室で一度高かっただけで、その数字だけから普段の血圧を判断するのは適切ではありません。
繰り返し測定し、家庭血圧も含めて評価することが重要です。
血圧には大きく、
医療機関で測る診察室血圧
と、
自宅で測る家庭血圧
があります。
診察室では緊張して血圧が高くなる人もいます。
これがいわゆる白衣高血圧です。
反対に、
病院ではそれほど高くないのに、自宅では高い
という人もいます。
これを仮面高血圧と呼びます。
家庭血圧では、
普段の生活環境で測定できる
複数日にわたって測れる
朝・夜の違いを確認できる
薬の効果を評価しやすい
などの利点があります。
特に診察室血圧と家庭血圧に差がある場合には、とても重要な情報になります。

【図1:血圧が高いと言われたら― 診察室血圧と家庭血圧をどう考える?】
基本は上腕式の血圧計をおすすめします。
測定するときは、
椅子に座って安静にする
背もたれを利用する
脚を組まない
腕を心臓の高さに近づける
測定中は話さない
などを意識します。
朝と夜など、できるだけ一定の条件で継続して記録すると診療に役立ちます。
非常に高い血圧や急激な血圧上昇などでは症状が出ることがあります。
しかし通常の高血圧では、
ほとんど症状がないことも珍しくありません。
そのため、
「頭痛がないから血圧は大丈夫」
とは判断できません。
高血圧が長期間続くと、血管や臓器に負担がかかります。
それでも自覚症状がないまま進行することがあります。
そして最初の大きな症状が、
脳卒中
心筋梗塞
心不全
という場合もあります。
これが、高血圧を放置してはいけない大きな理由です。
高い圧力が長期間血管にかかると、血管壁に負担がかかります。
さらに、
糖尿病
脂質異常症
喫煙
肥満
などが重なると、心血管リスクはさらに高くなります。
高血圧は単独で見るのではなく、その人が持つリスク全体の中で考えることが重要です。
高血圧は、
脳梗塞
脳出血
など脳卒中の重要な危険因子です。
特に脳の細い血管は長期間の高血圧の影響を受けます。
「まだ若いから大丈夫」と何年も放置することはおすすめできません。
血圧が高いと、心臓はより大きな力で血液を送り出す必要があります。
この負荷が長期間続けば、
左室肥大
心不全
などにつながる可能性があります。
また、高血圧は冠動脈疾患や心房細動などの心血管疾患とも関係します。
腎臓には細い血管が非常に多く存在します。
高血圧が長く続けば、腎臓の血管や糸球体にも負担がかかります。
そして腎機能が悪くなると、さらに血圧が上がりやすくなることがあります。
つまり、
高血圧 → 腎障害 → さらに高血圧
という悪循環が起こる場合があります。
高血圧だけで動脈硬化のすべてが決まるわけではありません。
しかし、
高LDLコレステロール
糖尿病
喫煙
肥満
などと重なることで、動脈硬化性疾患のリスクは高くなります。
したがって血圧だけを下げて終わりではありません。
血圧による心血管リスクは、ある数字を境に突然ゼロから100になるわけではありません。
血圧が高くなるほど、脳・心臓・腎臓などへのリスクは連続的に高くなります。
そのため、
どの程度の血圧なのか
年齢
糖尿病の有無
腎臓病の有無
心血管疾患の既往
喫煙
脂質異常症
などを合わせて判断します。
塩分の摂りすぎは重要な要因ですが、高血圧にはさまざまな要因があります。
たとえば、
肥満
加齢
遺伝
運動不足
飲酒
睡眠不足
ストレス
睡眠時無呼吸
腎臓病
ホルモン異常
一部の薬剤
などです。
したがって、
「薄味にしているのに血圧が高い」
ということは十分にあり得ます。
肥満、とくに内臓脂肪型肥満では、
交感神経系
腎臓でのナトリウム処理
RAAS
インスリン抵抗性
などを介して血圧が上がりやすくなります。
肥満がある方では、適切な減量によって血圧が改善することがあります。
前シリーズで肥満対策を詳しく解説したのは、高血圧治療にも直結するからです。
糖質そのものを単純に、
「食べれば直接血圧が上がる」
と考えるのは適切ではありません。
一方、糖質・総エネルギーの過剰摂取によって、
肥満
内臓脂肪
糖尿病
高中性脂肪
などが進めば、高血圧を含む心血管リスク全体に影響します。
肥満を伴う高血圧では、糖質の摂りすぎも見直す価値があります。
肥満+高血圧で特に重要なのが、**閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)**です。
睡眠中に無呼吸・低呼吸を繰り返すと、
低酸素
睡眠の分断
交感神経活性化
などによって血圧に影響します。
特に、
大きないびき
睡眠中の無呼吸
日中の眠気
朝の頭痛
治療しても血圧が下がりにくい
などがある場合には注意します。
高血圧の多くは、本態性高血圧と呼ばれるタイプです。
しかし中には、原因となる病気が隠れている二次性高血圧があります。
たとえば、
原発性アルドステロン症
腎実質性高血圧
腎血管性高血圧
睡眠時無呼吸
甲状腺疾患など
です。
たとえば、
若い年齢で著しく血圧が高い
急に血圧が悪化した
複数の薬を使っても高い
低カリウム血症がある
腎機能異常がある
強いいびき・無呼吸がある
などでは、二次性高血圧を考えることがあります。
全員にすべての検査をするのではなく、背景に応じて調べます。
健診などで高血圧を指摘されたら、
① 家庭血圧を測る
② 記録する
③ 生活習慣を確認する
④ 他の心血管リスクも確認する
⑤ 必要なら医療機関を受診する
という流れが基本です。

【図2:血圧が高いと言われたら最初にする7つのこと― 家庭血圧・肥満・塩分・睡眠・検査を確認】
患者さんの状態によって異なりますが、
血糖・HbA1c
LDL・HDL・中性脂肪
クレアチニン・eGFR
電解質
尿蛋白・尿アルブミン
心電図
などを確認します。
必要に応じて追加検査を行います。
目的は、
「血圧の数字を見ること」だけではなく、すでに臓器障害がないか、他の危険因子が重なっていないかを見ること
です。
軽度の高血圧では、
減量
食生活の改善
減塩
運動
飲酒の見直し
睡眠改善
などによって血圧が改善することがあります。
一方、血圧の程度や心血管リスクによっては、生活習慣改善だけでなく降圧薬が必要になります。
これは高血圧診療で非常によく聞かれる質問です。
薬を始めたから、
「一生絶対に中止できない」
と決まるわけではありません。
減量や生活習慣改善などによって血圧が下がれば、医師の判断で薬を減量できる場合もあります。
しかし自己判断で中止すると、血圧が再び上昇する可能性があります。
薬の変更・減量・中止は必ず医師と相談してください。
血圧の数字だけで緊急性を決めるわけではありません。
特に重要なのは、
胸痛
強い息苦しさ
突然の麻痺
ろれつが回らない
意識障害
突然の激しい頭痛
などを伴っている場合です。
こうした症状では、心筋梗塞・大動脈疾患・脳卒中など緊急疾患の可能性があります。
ためらわず119番を利用してください。
一回の診察室血圧だけで判断しません。
肥満があれば減量を検討します。
加工食品・汁物・麺類・漬物・調味料にも注意します。
無理のない身体活動を継続します。
心血管リスク全体を減らします。
いびき・無呼吸があれば評価します。
血圧だけを治療して終わりにしません。
高血圧診療で最も大切なのは、
「今日の血圧が何mmHgだったか」だけを見ることではありません。
家庭血圧を含めて普段の血圧を把握し、
肥満
糖尿病
脂質異常症
喫煙
腎臓病
睡眠時無呼吸
などを含めて、将来の心血管リスク全体を評価することが重要です。
必要に応じて生活習慣改善と薬物治療を組み合わせます。
高血圧は、多くの場合ほとんど症状がありません。
しかし症状がない間にも、長期間の高血圧によって、
脳
心臓
腎臓
血管
へ負担がかかります。
だからこそ、
「症状が出てから治療する」のでは遅い
場合があります。
健診で血圧が高いと言われたら、まず家庭血圧を測ってみましょう。
そして、
体重
腹囲
塩分
運動
睡眠
血糖
脂質
腎機能
まで含めて確認することが重要です。
高血圧治療の目的は、
血圧計の数字をきれいにすること
ではありません。
本当の目的は、
です。
症状がない今だからこそ、治療する意味があります。
健診で血圧を指摘された方、家庭血圧が高い方は、まずは内科クリニックへご相談ください。
必要に応じて専門医療機関へご紹介します。
高血圧の患者さんにまずおすすめしたいのは、
「薬を飲むかどうかを悩む前に、家庭血圧を測ること」
です。
診察室での一回の数字より、
普段どのくらいの血圧で生活しているのか
を知ることが、高血圧診療の出発点になります。
「140/90を超えなければ大丈夫?」
「家庭血圧は病院より低くていいの?」
「130台は正常?それとも注意が必要?」
次回は、高血圧の診断基準と降圧目標を混同しないこと、診察室血圧と家庭血圧の違い、年齢や病気によって目標をどう考えるかを、最新の考え方に沿って詳しく解説します。